2001年4月26日

幌加内から朱鞠内の友人宅へ行く日が、夫が旭川へ行く日と重なった。
わが家に車は1台、普段は1キロほど離れた工場への行き来に夫が利用している。
私が車を使いたい日は、朝と夜、夫を送り迎えするか自転車で行ってもらったりしている。
でも、今日は仕事での旭川行きだし、方向は逆、夫優先なのは仕方がない。
という訳で、朱鞠内へはバスで行く事になった。
考えて見れば、いつもいつも車で、深川方面ならともかく北へ向かうのは初めてだ。
ふっと、深名線もそうだったなと思う。ここの生活圏は旭川、深川。
本州へ行くのも南に向かう。幌加内以北の深名線に乗ったのは、保育園の社会見学(朱鞠内湖まで)と、廃止になる直前しかなかった。
幌加内発8時のバスに乗るために、自転車で通称「バスセンター」へ向かう。
正式名は「交流プラザ」で、商工会や観光協会、最近人気の「ほろほろ亭」(そば処)もある。そしてこの建物の裏手がバスの発着所だ。
自転車で着いた時、すでに名寄・深川行きの2台のバスが入っていた。
出発までまだ時間があると思ったので、バスセンターへ入ろうとして運転手さんにすれ違った。私が深川へ行くと思った彼は、「まだ大丈夫ですよね。」と確認する私に少しの時間があることと、後ろのバスだということを教えてくれた。
「いえ、朱鞠内へ。」と言うと、すぐ出発だと言う、「あれ?」と思いながらバスに乗り込む。バスの時計は7時52分。なんと、4月25日にバスは夏時間に変更になっていた。今日は打ち合わせで少し遅れたらしい。
幸先のいいスタートだ、乗り遅れたら2時間待たなくてはならない。

名寄行きのバスに乗客は私の他に1人。一番前の特等席に座る。雨竜川を眺めながら行きたいので右側、運転席のすぐ後ろ。座席は運転席より高くなっているので前も良く見える。
普段車で行くよりも高い位置からまわりの風景が見える。車ではチラチラッと脇見運転だが今日は思いきり窓外の風景を楽しめる。心が弾む。
国道に沿って蛇行する雨竜川の水面もいつもよりずっとよく見える。

バッグの中にはカメラと双眼鏡。何度か撮りたい風景を目にするが、カメラを構えた瞬間風景は後ろへ流れて行く。今日の景色も心の中のアルバムにしまわれる。
幌加内から少しの間は田園地帯、雪が解け田んぼが見える。が、すぐに雨竜川を渡りまわりは林間地帯になる。もうここからは雪野原だし人家もほとんどない。
雨竜川のすぐ横を走って通称「ポンコタン」と呼ばれるところを過ぎたら旧深名線の緑の鉄橋があり、間もなく政和温泉ルオント前となる。

左、今日のポンコタン鉄橋。
右、約1ヶ月前。斜面に小さな雪崩が起きている。
バスは去年できた道の駅の横に停まるが相変わらず乗客はなし。
ここからまた畑作地帯、政和の小さな集落を通りすぎる。畑と思われる雪原の中に新しい家と鯉のぼり、すっかり子どもの少なくなったこの地域には期待のシンボルかもしれない。
政和を抜けて更にバスは原野の中、北へ向かう。
右には雨竜川、左手は三頭山を始めとする山波が白く輝いている。
山を見、雨竜川やそこへ注ぐ支流の川をいくつも渡り、雪原や雪の斜面の解け具合を見、樹々を見る。車窓風景に飽きる事はない。浅瀬のある川を見れば、あそこで遊んだら楽しそうだと思い、大きな木を見れば登って見たいと思う。斜面を見れば滑り降りてみたい…。
以前次女に「そう思ってるでしょ?」と聞いたことがある。
「何で解かるの?」と不思議そうだったが、実は私がいつも思っていること。すっかりおばさんになってしまっても、心の中には子どものままの私がいる。
添牛内を通り過ぎたらバスは左に曲がる。まっすぐ行くと士別市だ。
JRバスは深名線の廃止に伴ない、住民の足としてスタートしたので、かつて深名線が通り、利用者のいる可能性のある旧駅の近くを通る。深川から名寄まで、どうしてこんなに遠回りをするの?と思われる道や、国道から奥まったところまでの往復もある。
だから朱鞠内を抜け、右へ曲がって名寄への国道を進みたくても、朱鞠内湖方面の旧湖畔駅まで往復もする。
乗客は朱鞠内でおばあちゃんが2人乗り、初めから乗っていたおじさんは「まどか」の前で下りた。
私の目的地は旧湖畔駅、今のバス停名は「三股(みつまた)」。友人宅はそこをさらにまっすぐ行き、冬期通行止めのゲートのすぐ手前。三股を右へ折れたら1キロほど先に朱鞠内湖がある。夏期は本当の湖畔までバスが行くのだが、今は曲がったすぐ先で折り返しになる。
降り際に運転手さんが「湖畔まで行くの?」と聞いた。もしそうなら少しでも近くの折り返し点まで乗せてくれるつもりだったのだろうか?
「いえ、ここをまっすぐ、お友達のところに…」と言ってバスを降りる。
私も友人も10分後着の予定だったから、もちろん迎えの車はまだ来ていない。それでも一本道なのでためらわずに北へ向かう。
まわりはまだまだ雪だらけ、でも天気は良く小鳥がさえずっている。友人宅まで1キロ余りの道、途中に人家は1軒。
何だか浮き浮きしながら歩く。ずーっとずーっと昔、一人旅をして見知らぬ町を歩いた感触が甦る。
バスに乗っている途中に色々なことを考えながら、ふと「冒険」の2文字が頭の中に浮かんだ。今日バスに揺られてきたこの道を、長女が小学生の頃、自転車好きの担任に連れられて親子レクで何度か走った。(が、それは練習で、その後彼女らは2泊3日の日程で、幌加内〜添牛内〜霧立峠〜達布〜小平〜達布〜沼田〜多度志〜幌加内の自転車ツーリングを実行した。)
その影響で個人的にも小学生低学年の次女も連れ、自転車で朱鞠内湖往復をしたことがある。距離にして片道約40キロ、バスなら50分。
「冒険」の言葉が浮かんできたのは、そんな過去の思い出に浸った時。今の子ども達は、それを冒険と呼べるか分からないけれど、そんな大変な思いをしているのだろうか?と思った。何でも安易に手に入り、TVゲームの仮想冒険だけしか知らないのでは???(注:TVゲームは家の家族全員が好きですが。)
すごーく大変でもやりとげた喜びをたくさん経験すれば、その後の人生に向かい、生きる力になるだろう。
(わが家の生活は、家計の遣り繰りに大変でまた違った意味で冒険の気もする。)
バス停から友人宅の中間地点で迎えの車がきた。
−−−友人宅の用事は略−−−
さて、行きがあったら帰りもある。
夕方、友人は士別に用事があるので途中の添牛内まで送ってもらう。
バス停で待つことしばし、見なれたJRバスがやってくる。
乗客は誰もいない。再び一番前に座る。今度は左側、やはり雨竜川の見える方だ。いつでも私はこの右左に結構こだわる。例えば海沿いを走るなら、やっぱり海の見える方に座りたいよね。だから地図での路線確認は欠かせない。

夕映えで淡い赤に染まった山肌を見ながら、バスは政和に近づく。と、ピンポーンと停まります!の合図。あれ?誰も乗ってないと思ってたのに乗客がいた。バスはいつもお世話になっているYさんの家の横に停まる。顔見知りの高校生2人、「こんにちわ。」と言うと意外な顔で挨拶を返してくれた。
やがて車での往復とは次元の違った旅は終わりに近づき、幌加内市街地に着こうとする直前、田んぼの中に白鳥を見る。
参考までに
幌加内→朱鞠内(三股)片道820円、住民の足がなくならないよう、皆さん利用してね。
現在深川方面10往復、名寄方面8往復(内2往復は朱鞠内まで)
時刻の問い合わせは「ジェイ・アール北海道バス深川営業所」
TEL 0164−22−2901
フリーダイヤル 0120−35−2225(近隣地域のみ)
FAX 0164−22−8840