 |
大きな山の向こうでは、 お空の雲が、何日も何日も泣き続け、
草むらにはいくつもの大きな水溜りができました。
「おーい、そんなに泣いてばかりいると、僕達の住処が、水浸しになっちゃうよ」
草むらの中から、声が聞こえます。
そこには、真っ黒い体をして、ピンと触覚を立てている黒ありの、クルがいました。
「全く、あの雲の奴。いつまで泣いているんだ。」
黒ありのクルは、目を細めながら、ちょっとえばって 空を見上げました。
お空にはモクモクの真っ黒い雲。大粒の涙を、次から次へとこぼしています。
「母ちゃんに怒られたのか?ごめんなさいって言ったのか?」
クルは、さっきお母さんに叱られたばかりだったね。
お空の雲は、何も答えません。
「勝手にしろ!泣き虫雲め。」
クルは、ずんずん歩いて、巣へ帰って行きました。
水溜りがまた、大きくなっているように思いました。
|
その夜、お空の雲たちは、大声を上げながら一斉に泣き始めました。
いくつもいくつも、雲が集まり、 ゴンゴロゴンゴロ ドカドカ ドカーン
お空は、ピカピカ お日様くらい眩しく光っています。
次の朝も、夜も、また次の日も、 お空の雲たちは大声で泣いています。
何日過ぎた頃でしょう。 川が溢れクルの住処に水が流れ込んできました。
「大変だ!大変だ!」
クルは、触覚をピクピク動かして、 お母さんの所へ走り出しました。
その時、大きな大きな音がして、クルは突然飛ばされてしまいました。
「うわぁー!母ちゃん!!」
叫ぼうとしても声が出ません。
体が、勝手に浮き上がり グルグルグルグルまわります。
息をする事もできません。 クルは水に流されていたのです。
「苦しいよー。怖いよー。目が回るよー」
ものすごい勢いで、クルは流されています。
「僕、負けないよ!!絶対にあきらめない!!」
クルは、真っ暗闇に包まれて 遠くまで運ばれてしまいました。 |
ぽかぽかと暖かい光に包まれて、クルは目を覚ましました。
「イテテテテ・・・」
自慢の触覚を動かそうと思っても、痛くてうまく動きません。真っ黒の体も、泥だらけ。
あたり一面泥だらけです。 草花はみんな倒れています。 傷だらけの虫達が、泣いています。
「母ちゃんは何処だろう?母ちゃん!母ちゃん!」
クルは、ありったけの大声でお母さんを呼びました。
触覚をそっと動かして、お母さんの匂いを探すけれど、
まわりは、知らない匂いばかりです。
クルは、痛めた足をかばいながら、一生懸命お母さんを探しました。
「母ちゃんがいない・・・仲間もいない」
心細くなったクルは、とうとう泣き出してしまいました。
お腹もすいたし、喉も渇いた、 体もあちこち痛みます。
お空には、お日様が優しく顔をのぞかせています。
「母ちゃんはどこ?ここは何処なの?」
お日様は、何も答えません。
「僕、負けないよ!」泣きながらクルが言いました。 |
次から次へと涙が出ます。何が哀しいのか、
もう自分でもわからなくなるくらい、 クルは、泣き続けました。
「どうしたの?ママに怒られたの?」
後ろの方から、突然声が聞こえました。 クルは、涙を拭きながら、
「違うよ。そんなんじゃないよ」
と 慌てて、後ろを振り向きました。
するとそこには、見た事もない、
真っ白い女の子が立っていました。
頭のてっぺんに、毛が生えているけれど、
濡れてしまって、ペッタンコ。 体は細くて折れそうです。
「わたしの名前は、ポポ。
雨に濡れて動けなくなっちゃったの。
お日様がやっと出たからね、 こうして体を乾かしているの」
ポポは、両手を広げて ゆっくりゆっくり回っています。
まるでバレエでも踊っているようで
クルは、泣くのも忘れて しばらく見つめていました。 |