オペラの感想
<オルレアンの少女・スロヴァキア国民劇場・9/21>
前から4列目くらいの席。それほど華やかに着飾った人がいないのに、一人だけ村娘とは程遠い目立つ服装をした女性が演奏前にロビーでうろうろしていた。実は彼女がジャンヌ役を歌うヨラーナ・フォガゾーヴァーだったのだ。序曲の時、その服装のまま彼女は前から舞台に上がってきたのであった。その演出にはやや戸惑ったが、他の点では映像なども上手に利用されていた。主役の声はロシア・オペラによく合う冷たいスラブ的な声質であった。
チャイコフスキーが大好きな私は「エウゲニー・オネーギン」「スペードの女王」以外で実演されるオペラを探していた。この劇場は「金鶏」もレパートーリーにあり、ロシアのオペラハウス以外ではロシア・オペラは充実しているのではないだろうか。
他の登場人物の存在感がジャンヌに比べて、今ひとつピンとくるものはなかった。出番が足りなすぎるのである。ジャンヌの恋人リオネルも、父親の勧める結婚相手ライモンドももっと出番が多くてもいいのに。シャルル7世の愛人アニエスのアリアもカットされていた。
原語上演に字幕はスロヴァキア語だったけど、元々好きなオペラだったので、それほど不自由な感じはしなかった。
<ロベルト・デヴリュー・ウィーン国立歌劇場・9/22>
グルベローヴァが主役を歌う。彼女は確かスロヴァキア出身だったはず。でも、昨日のオペラの主役の声とは全然違うベルカント的な声なのだ。彼女のコロラトゥーラは強弱のつけ方は好きだが、なんだか押し付けがましいという点もある。まぁ、「コロラトゥーラの女王」なんて呼ばれる以上、仕方がないかも知れない。彼女はコロラトゥーラの部分を歌うたびよろめいている。それは老け役の演技のせいなのか、くせなのか、自分自身に酔いしれているのかよくわからない。 演出はウィーン国立歌劇場にしては斬新ではないだろうか。ソリスト以外は全員タキシードにシルクハット。サラとデヴリューの二重唱の終わりあたりに10人ぐらいのエリザベスがどどどっと押し寄せてくるのがちょっと笑えた。それにしても、タイトルは「ロベルト・デヴリュー」なのに、タイトルロールの存在感は薄い。ノッティングハム公爵役のレナート・ブルゾンは地道にやっているという印象だった。
<カンダウレス王・フォルクス・オーパー・9/23>
このオペラのCDを日本で探してみたがなかなか入手できなかった。ストーリーは自分の奥さんの魅力に対する他人の評価が気になるカンダウレス王が、自分が信頼する漁師と妻を共有しようとするが、その王妃は漁師に王を殺させてその漁師を自分の夫にして王位を与えるという話。 衣装とか演出はかなりエグイ。王妃の頭は金色のヘルメットみたいので覆われているし、臣下たちも顔が白塗りだったり、黙役の漁師の妻の顔は黒く、タラコ唇である(元々の黒人ではなくて、白人に顔を黒塗りしたんだと思う)。 が、ツェムリンスキーの音楽はなかなかよかった。ただ、演出の奇抜さに気を取られてしまうのである。原語はドイツ語で、字幕はなかった。
<薔薇の騎士・ウィーン国立歌劇場・9/24>
このオペラを観る前に、オペラ座向かいのホテル・ザッハーでザッハー・トルテを食べてきた。ごくごくオーソドックスな演出で、マルシャリンを歌うのはインガ・ニールセン。オクタヴィアンを歌うのはアンゲリカ・キルヒシュュラーガーで、マリアンデルがよく合っている。このオペラハウスのプログラムの後ろの方には日本語の粗筋が載っているが、このオペラに限っては、小林一夫さんという人の評論まで載っているのである。今回の旅行最後のウィーンのよるをこのオペラで締めくくるというのはなんともいえない余韻があった。