Anna Bolena

(ドニゼッティ作曲)

あらすじ

1幕

アンナは前王妃の侍女だったが、エンリーコの寵愛を受けて、王妃となった。しかし、エンリーコはすでに心変わりしていて、アンナの侍女のジョヴァンナと不倫の関係にある。アンナを裏切った良心の呵責に悩んでいるジョヴァンナはエンリーコに不倫を清算したいと言うが、エンリーコは彼女にアンナを処刑してお前を王妃にしてやる、という。

アンナのかつての恋人だったペルシーがエンリーコに許されて外国から戻ってくる。エンリーコはアンナのおかげで戻れたと言うと、ペルシーは彼女に感謝する。その様子を意味ありげにみたエンリーはペルシーとアンナを見張るようにと命じる。

アンナの居間で、楽師スメトンが王妃の肖像画を盗もうとするが人の気配がするので隠れる。アンナと彼女の兄ロシュフォールが入ってくる。兄はペルシーとの関係をはっきりさせるようにと説得し、アンナは清算するべく、会うことにする。ロシュフォールと入れ替わりにやってきたペルシーはアンナにはっきりと拒絶されるので、自殺をしようとする。驚いたスメトン飛び出してきて止めようとするので、アンナは失神する。スメトンとロシュフォールが彼女を介抱しようとすると、エンリーコがやってきて、不貞をとがめる。王はアンナに裁判で弁明するようにと言う。

2幕

良心の呵責に苦しむジョヴァンナはアンナに離婚すれば、命は助かるだろう、と言うが、アンナは王の愛人の名前を聞く。ジョヴァンナは自分こそが愛人であることを打明ける。

裁判では、王の策略に騙されたスメトンが不利な発言をしたため、アンナとペルシーに死刑宣告をする。ジョヴァンナはエンリーコに助命嘆願をするが、相手にされない。

アンナは自分のせいで死刑になったことをロシュフォールとペルシーに詫びる。外でエンリーコとジョヴァンナの結婚の騒ぎを聞くうちに、アンナは狂死する。

 

 

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エンリーコとは6人の王妃を迎えたヘンリー八世のことで、アンナ・ボレーナはその2番目の后、アン・ブーリンのことです。ジョヴァンナは3番目の后のジェーン・シーモアのことです。

ヘンリー八世は教養の高い人で、スペインのアラゴン家からカタリーナという王女を后に迎えました。しかし、2人の間の子で実際に育ったのは、王女のメアリーのみです。どうしても跡取となる男子が欲しいと思った、ヘンリーは王妃の侍女で愛人のアン・ブーリンが妊娠したので、離婚します。カタリーナ、英国名キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚についてはローマ法皇が許しませんでした。スペインはローマ・カトリックの最大のお得意先です。ローマはキャサリンとも関わりがあります。これに反対したのは、「ユートピア」という著書で有名なトマス・モアです。トマス・モアはヘンリーの親友でしたが、これが原因で処刑されてしまうのです。

こんな無茶なことをしてまで、結婚したアンだというのに、彼女もまた、成長したのはエリザベスのみです。またしても、期待を裏切られたヘンリーは彼女に姦通罪を着せて処刑します。しかし、その直後にアンの侍女ジェーンと結婚します。そのジェーンは童話の「王子と乞食」のモデルのエドワードを産みますが、産褥で死にます。

その後は、ドイツからプロテスタントとの連携を取る目的で、アン・オブ・クリーヴスを迎えますが、平凡で容姿も気に入らなかったので、すぐに離婚します。しかし、彼女はアン・ブーリンとは違って政略結婚でしたので処刑するにはいかず、「王の妹」と呼ばれ、年金を与えられ、6人の后の中ではもっともマシな人生を送ります。
次に結婚したのはアン・ブーリンと親戚関係にある、キャサリン・ハワードですが、彼女はかつての夫とまだ続いていたという理由でアンと同じ理由で処刑になります。
最後に生き残れたのはキャサリン・パーです。彼女はとても聡明な女性で、一旦、私生児となった、メアリーとエリザベスの皇位継承権を復活させます。ヘンリーの死後、彼女はジェーン・シーモアの兄と再婚します。彼は少女時代のエリザベスの初恋の相手だとも言われています。キャサリン・パーはジェーンと同じく出産で命を落としますが、どうやら梅毒のヘンリーの影響があったのかも知れません。

6人の中で、もっともヘンリーが愛していたのは、どうやらジェーン・シーモアだったようです。キャサリン・パーが王妃になっている時であるにも関わらず、彼は両端にメアリーとエリザベスが立ち、真中にジェーンとヘンリーが座って、その間にエドワードがいる絵を描かせています。オペラと同じようにジェーンは、不倫ということに罪悪感を持っていたようです。アン・ブーリンと仲が悪かったメアリーも彼女に対しては悪い関係ではなかったようです。

このオペラは初演は好評だったものの、しばらくの間、埋もれていました。このオペラが知られるようになったのは、全盛期に歌ったマリア・カラスのおかげであるようです。
ドニゼッティはイングランドのチューダー時代の女王物のオペラとして「マリア・スチュアルダ」も出していますが、登場するテノールは彼女を愛することによって、不本意に破滅へと追いやってしまう男という共通点があります。ソプラノのヒロインばかりがよく目立つのです。

このオペラで有名なのはフィナーレの「狂乱の場」です。アンナは狂乱と正常とを何度も往復しながら息絶えるのです。ずっと夢の中で狂死したルチアのほうが、どれだけ精神的に楽なことだったでしょうか?私はカラスとサザーランドを聞いたことがありますが、まだ納得できる録音は聞いていません。

 

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