Voina i mir

(トルストイ原作/プロコフィエフ作曲)

初演

1957年11月8日 モスクワ・ダンチェンコ劇場

登場人物

アンドレイ・ボルコンスキー(若い寡の公爵、Br)/ナターシャ・ロストヴァ(伯爵令嬢、S)/ソーニャ(ナターシャの従姉、MS)/アフロシーモヴァ(ナターシャ、ソーニャの祖母、A)/ロストフ伯爵(ナターシャの父、B)/ピエール・ベズーホフ伯爵(アンドレイの友人、T)/エレン(ピエールの妻、MS)/アナトリー・クラーギン公爵(エレンの兄、T)/コトゥーゾフ元帥(ロシアの将軍、B)/ナポレオン(フランス皇帝、Br)/ボルコンスキー公爵(アンドレイの父、B)/マリア(アンドレイの妹、S)/マトリョーシャ(ジプシー女、MS)/アレクサンドル1世(ロシア皇帝、黙役)/他 フランス人女優、フランス人医師、フランス人司祭、召使、軍人、民衆 たち

あらすじ

<1部>

1場

若くして男やもめになったアンドレイは滞在先のロストフ家の令嬢ナターリアを見初める。

2場

ペテルブルクの舞踏会でアンドレイは社交界デビューしたてのナターリアに愛を告白する。アンドレイの友人ピエールはまじめな青年だが、その妻エレンの素行は良くない。ナターリアに惹かれた放蕩者アナトリーは妹である彼女にとりなしを頼む。

3場

アンドレイと婚約したナターリアは父親ロストフ伯爵と一緒にアンドレイの父、ボルコンスキー公爵の家を訪れるが、身分違いと言う理由で冷遇される。アンドレイの妹マリアは慰めようとするが、ナターリアは彼女をさえぎる。

4場

ピエールの家での舞踏会で、エレンはナターリアにアナトリーの恋を告げる。当惑する彼女の目の前にアナトリーが登場し、手紙を渡す。ナターリアは動揺する。

5場

 アナトリーはジプシー女の愛人マトリョーシャとの関係を清算し、駆け落ちするために、ナターリアの元へ行く。

6場

ナターリアはアナトリーを待っていたが、召使たちに妨げられて失敗してしまう。ピエールはナターリアにアナトリーが既婚者であることを知らせる。ナターリアは後悔し、アンドレイとのとりなしを頼むが、ピエールもまた既婚者でありながら、ナターリアを愛していたのだった。

7場

ピエールの書斎でフランス人神父やアナトリーをエレンがもてなしている。帰宅したピエールはアナトリーを非難してモスクワから立ち去るようにという。

<2部>

8場

フランスとの戦争が始まる。アンドレイはナターリアのかつての恋人デニーソフとパルチザンについて話し合い、ピエールに父の死を告げる。兵士達はフランスの攻撃に立ち向かう。

9場

 フランス軍を指揮するナポレオンの元には不利な知らせばかりが入ってくる。

10場

フィリの農家で戦略会議が行われている。クトゥーゾフ元帥は一旦、モスクワから退去する策略を練る。

11場

ロシア兵が退去したことで、モスクワがフランスのものになることを恐れたモスクワ市民は自ら火を放つ。ロストフ家はアンドレイを含む負傷兵たちと一緒に郊外へ避難する。モスクワに戻ったピエールはフランス軍に捕えられる。

12場

モスクワ郊外の農家で瀕死のアンドレイの元にナターリアがかけつける。許しを請うナターリアだが、アンドレイはペテルブルクの舞踏会を回想しながら死んでいく。

13場

フランス軍が撤退して行く。ピエールはパルチザンに助けられる。アンドレイとエレンの死とナターシャの無事を知らせられる。民衆は祖国への愛と平和を称える。

 

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平和と愛国心を同時に称える政治色の濃いオペラです。プロコフィエフはロシア革命の後、アメリカやフランスに亡命しますが、西側に失望して、結局、ソ連に戻ることになります。それから6年後、ソ連はナチス・ドイツの侵略を受けます。これが、ナポレオンによるフランス侵略に対するロシアの勝利を題材にしたトルストイの大作「戦争と平和」をオペラ化する要因となるのです。プロコフィエフ自身の健康悪化、イデオロギー引き締めや原作の歴史的解釈による批判などの元で、映画監督のエイゼンシュテインなどの助けを借りて長大な作品を作り上げることに成功しました。多くの助言を受けながら作曲したオペラのなので、5つの版が残されています。、プロコフィエフはこの「戦争と平和」以外にもロシアの愛国心をテーマにした「セミョーン・カトコ」というオペラを作曲しています。

何しろ、13場もあるとは。演出にはお金がかかりそうですよね。登場人物もトルストイの原作と同じように多すぎます。さぞかし、人集めにも一苦労するでしょうね。

一部には「平和」という名前がつけられ、のどかな雰囲気で始まります。それに対して二部には「戦争」という名前が付けられ、侵略に対して命をかけて国を守ろうとする民衆の合唱です。最後はエレンとアンドレイが戦死し、ナターリアが生きているというピエールにとっての幸せをほのかに予感させる結末です。

登場人物の中にはアレクサンドル皇帝や、ナポレオンなど実在人物も登場します。主要なのはアンドレイ、ナターリア、ピエール、アナトール、エレンの5人ですけれども、二部になると主役はロシアの民衆に引き継がれているようです。

民衆の中に、ヴァシリーサというソロを歌う農婦がいます。「自分の命を捨ててでも国家を守る」なんていう愛国心を、戦争の一番悪い理由は国家が人命を奪うからだと思っている私に理解しろ、なんていうのは難しいですけど、彼女の毅然として侵略に立ち向かうように扇動する時の音楽は優れてるとは思います。しかし、実は、こうなったのはモスクワの共産党の影響でもありました。党芸術委員会は「当時の貴族生活よりも、ロシア民族の英雄的行為を強調すること。」を条件にこの作品を認可したからです。

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