La Clementina
(ボッケリーニ作曲)
あらすじ
1幕
裕福なドン・クレメンテには、ナルチーザとクレメンティーナという2人の年頃の娘がいる。ある日の朝、音楽教師のドン・ラツァロが、ドン・ウルバーノとマルケスという2人の男を連れてやってくる。ドン・ウルバーノは、クレメンティーナに一目ぼれしてしまう。マルケスは、ナルチーザと結婚しようと考える。戻ってきたドン・ラツァロは小間使いのクリステーナに言い寄っている。
しかし、ドン・クレメンテは実はクレメンティーナは自分の娘ではなくて、彼女が赤ん坊の時に引き取った孤児であることという秘密を打ち明けてしまう。クレメンティーナをどのようにして見つけたのかということを聞き、ウルバーノは彼女が、死んだと思っていた姉に他ならないことに気づいてしまう。
結局、ウルバーノはナルチーザと、マルケスがクレメンティーナとラツァロがクリステーナと結婚することにする。
****************************
モーツァルトを思い出せるほのぼのした美しい音楽の小ぶりなオペラです。「コシ・ファン・トゥッテ」のような重唱のバリエーションを楽しむことができます。姉妹と友人、彼らを引き合わせる教師と召使という人物設定までよく似ています。
一目ぼれした女性が、死んだと思っていた妹なんていう偶然、ちょっと出来すぎています。しかも、それがわかった途端に、彼女の義理の妹とあっさりと婚約してしまい、カップルが入れ替わってしまうのです。でも、「コシ・ファン・トゥッテ」のようにそれの原因が、恋の裏切りでないだけ、観客はすっきりするのかもしれません。話のメチャクチャさは、他のオペラに負けてはいませんね。
美しくも音の高低がよく飛ぶ序曲が終わると、クレメンティーナとナルチーザの美しい二重唱で始まります。そして、番号オペラでありながらも、レチタティーボは当時のオペラとしては大変少なく、独立したアリアと重唱曲が竹の節のようにつながっています。クレメンティーナがもの思いにふけるアリアは短調ですが、ナルチーザと一緒にいるときは本当に楽しそうで二重唱で「ハハハハ」なんて歌っています。きっと、妹に心配させたくないというやさしいお姉さんなのでしょうね。モーツァルトよりも負けていないのはコロラトゥーラを駆使したテノールのドン・ウルバーノのアリアです。テノールのコロラトゥーラはバロックやロッシーニで聞く機会があるのかもしれませんが、古典主義で聞いてみたい方はぜひチャレンジしてみて下さい。最初の姉妹の二重唱と全く同じ旋律で、カップルが決まった6人の重唱でこのオペラが終わります。オペラによく見る派手なフィナーレではありません。野山の小花のような無名で小ぶりだけど可愛らしいオペラです。