Erwartung
(マリー・パッペンハイム詩/シェーンベルク作曲)
あらすじ
1幕
失恋で精神が混乱した白い服を着けた女性が自分の恋人を探すために森へ入ろうか迷っている。夜になっていて、月も暗く、コオロギが鳴いている。彼女は勇気を出して、ためらいながら森の中の道を歩いていく。考え事をしなたら、彼女は木や草、月、茸などを見て、人がいるのかと動揺しながら進んでいく。そして、男が倒れているのに気づく。彼は自分が探していた恋人で、体が冷たいのに気づくと、なんとか起こそうとして話しかける。しかし、その死体は返事をしないので、絶望してしまう。
やがて、彼女は、その男が二股をかけていた女に嫉妬し、その死体をなじり、非難しようとする。その怒りがやがて、悲しみに変わっていき、すがりつこうとする。
しかし、夜がふけようとしてきている。彼女は本当の別れが来てしまったということを悟る。死体に情熱的なキスをすると、喜びの声をあげ、何かに向かって「あなたがそこにいる。私探していたの」と叫ぶ。
プーランクの「声」と同じく、失恋をした女性が一人のみで演じるモノ・オペラです。「声」は別れたばかりの女性の思いつめて、相手の男を必死につなぎとめようとする様子が伝わり、最後には首に電話線を巻きつけるところで終わってしまいますが、こちらは、精神が混乱してしまった女性が森にいる自分が殺した恋人の死体に話しかけるというオペラです。ベルクの「ヴォツェック」にも、嫉妬で自分が殺してしまった恋人に話し掛ける場面がありますよね。その場面の演出には月や蛙や鳥などの野生の動物の鳴き声を不気味に演出するところなども似ています。「声」は女性の部屋という設定でしたが、このモノ・オペラは女性が歩いているという設定ですから、ある程度、動きのある演出が必要ではないかと思います。
終わり方がとても中途半端なのです。他の音楽の終わり方のようではありません。その後の彼女はどうなったのでしょう?朝だからとお別れのキスをしたとき、彼女は一瞬、正気に戻ったようですが、急に情熱的になり、「あなたがいる」と叫びます。朝になって、彼女は正気に戻り、森から出たのでしょうか?それとも、そのまま森で死体と一緒にいたのでしょうか?
この詞の作者、マリー・パッペンハイムは精神医学を学んでいました。この作品を作るに当たって彼女はその知識を利用したところがありますが、その表現はシャーンベルクの音楽によって、よりきわどさを作るものになっています。