La Favorita

(原作ロワイエ、ヴェーズ「ニシダの天使」/ドニゼッティ作曲)

 

1幕

スペインの修道士フェルナンドは父親の修道院長バルダッサーレに見知らぬ女性に恋をしてしまったことを告白し、修道院を出る。

レオネ島では、フェルナンドが恋をした女性、レオノーラが暮している。彼女は国王アルフォンソ11世の愛妾だが、密かにフェルナンドに思いを寄せていたのである。フェルナンドは彼女に素性を尋ねるが、答えようとしない。

イネスがアルフォンソ11世の来訪を知らせるので、レオノーラが身分の高い女性であることを知ったフェルナンドは彼女に相応しい身分になろうと、軍隊で成功する決意をする。

 

2幕

王は切実にレオノーラに対する愛を訴えるが、彼女は日陰の立場を嘆く。重臣ドン・ガスパロが別の男からのレオノーレ宛の恋文を王に見せる。王妃の父親でもあるバルダッサーレは愛妾を持ち、王妃を省みない王を懸念して、強気な王に対して破門をほのめかす。

3幕

手柄を立てて戦争から帰ってきたフェルナンドは、武功をねぎらい、欲しいものは何でも与えるというアルフォンソにレオノーラとの結婚の許可を求める。アルフォンソは渋々承知する。レオノーラは自分が王の愛人だったことをフェルナンドに伝えて欲しいとイネスに頼むが、イネスはドン・ガスパロに捕えられてしまい、伝わらない。貴族達は冷ややかな目で結婚式を終えたフェルナンドを見ている。ドン・ガスパロの「レオノーラの花婿さま」という言葉でレオノーラが王の愛妾であることを知ったフェルナンドは激怒して王に抗議し、バルダッサーレと共に去っていく。

4幕

修道院へ戻ったフェルナンドは姉の王妃の死を追悼している。バルダッサーレは王妃のために復讐するようにとフェルナンドに言う。

弱りきったレオノーラがフェルナンドに会うために修道院へやってくる。怒っていたフェルナンドもレオノーラの気持ちに負け、彼女を許し、まだ愛している言う。許されたことを喜んだレオノーラは力尽きて死んでしまう。

 

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「ファヴォリータ」とは王の愛妾という意味です。ヨーロッパでは一夫一妻制のせいか、正規の王妃以外にたくさんの愛妾がいた、という話は珍しくありません。王妃以上の政治的権力を持った愛妾もいます。その寵姫たちはどうなったかというと、王の死後、修道院へ入ったり静かに暮した人もいれば、別の男性と結婚した人もいます。王の愛人だった女性が別の男性と結婚する、ということは「王のお手つき」ということでそれほど難しいことでもなかったようです。

しかし、フェルナンドは元修道士ですので、そのようなことは気に入らなかったのも無理はないでしょう(しかし、王妃の弟だから、修道士とはいえ、愛妾の顔ぐらいは知っていてもおかしくはないと思うんだけど)。「椿姫」のアルフレッドは娼婦であったヴィオレッタの過去を知っていても愛していたというのに(こっちも悲恋になってしまったけど)、フェルナンドにとってはレオノーラが軍隊で栄光を収めた原動力であったため、尚更、王に抗議してしまい、自暴自棄になってしまいます。

アルフォンソにしても踏んだり蹴ったりですよね。愛妾とはいえ、本気で愛していた女性との別れに耐えて、フェルナンドとの結婚を承諾したと言うのに、そのフェルナンドから非難されてしまうのです。

このオペラのタイトルや登場人物の名前は何度も変りました。フランス版ではイネスの名前はエリアンになっているし、ウィーンでのタイトルは「リヒャルトとマティルデ」、ヴェネチアではアルフォンソはフランスの太陽王ルイ14世で、レオノーラはエルダという名前のギリシャの女性です。今のように落ち着いてしまったのは第二次世界大戦後のことなのです。このオペラは初演時の評価もそれほど悪くはなく、上演回数も多かったのですが、今はアンナ・ボレーナよりも上演回数が少ないようです。

しかし、上演回数が少ないわりには、アリアや重唱などはリサイタルなどで歌われることが多いです。有名なのはレオノーラの「いとしいフェルナンド」、アルフォンソの「レオノーラ、私の愛を受けてくれ」などです。

レオノーラはドニゼッティのヒロインには珍しいメゾ・ソプラノの役です。ドニゼッティの時代ではソプラノとメゾの区別ははっきりしていなかったのが、原因なのですが、メゾならではの劇的表現が上手になされていると思います。

 

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