Les Huguenots

(スクリーヴ、デシャン、ロッシ台本/マイヤベーア作曲)

あらすじ

1幕

ヌヴェール伯爵の家で、カトリック信者達が宴を開いている。そこへユグノー教徒(新教徒)のラウルもやってくる。彼はカトリックとプロテスタントの和平の鍵を握る人物である。ラウルはなんとかしてカトリックの人々と溶け込もうと努力している。しかし、ラウルの従者マルセルが登場して、露骨にカトリック打倒の歌を披露する。若い女性が訪れてきたので、ヌヴェールは席をはずす。人々はドアの窓から若い女性の顔を覗く。ラウルも覗いて見ると、それは名も知らずに恋している女性であることに驚き、ヌヴェールの愛人だと思いこんでしまう。実はこの女性はヌヴェールとは親同士が決めた婚約者の関係だが、国王に婚約破棄を命じられて、別れを告げに出向いてきたのだった。女性が去ると、ヌヴェールは落ち込んでしまうが、人々が女性のことを冷やかすので、見栄を張ってのろけてみせる。

ラウルは、匿名の女性から目隠しをしてくるようにという手紙を受け取る。人々はそれが王妹のマルグリットであることを知り、急に低姿勢な態度を取り始める。

2幕

王の妹、マルグリット・ド・ヴァロアはカトリックとプロテスタントの和平を願っている。ヌヴェールが呼ばれた理由は、その和平の明かしとして旧教徒と結婚するためである。ラウルとマルグリットはお互いに引かれ会うが、なんとか体裁を繕おうとする。彼女は和平のためのパーティーを開き、ラウルと旧教徒の女性、ヴァランティーヌとの婚約を発表する。しかし、ヴァランティーヌが、ヌヴェールの恋人だと思いこんでいる、ラウルはその結婚を断る。

3幕

プロテスタントが好戦的な賛美歌を歌うと、カトリックは聖母マリアをたたえる聖歌で対抗する。宗教間の溝はどんどん深くなっていく。ヌヴェールとヴァランティーヌとの結婚式が行われる。旧教徒たちは屈辱に復讐するために、ラウルを殺そうという計画を練っているのをヴァランティーヌは立ち聞きしてしまい、マルセルに危機を訴える。その計画が元でカトリックとプロテスタントとの争い事がひどくなって行くのを通りかかったマルグリットがさえぎる。彼女はヴァランティーヌが以前、ヌヴェールのところへ行ったのは、婚約破棄のためだったということを説明する。

4幕

ラウルはヴァランティーヌに会うためにヌヴェールの家にやってくる。ヴァランティーヌの父親、サン・ブリやヌヴェールたちが、やってくるので、ラウルは隠れる。旧教徒たちはカトリーヌ・ド・メディチからプロテスンタント打倒の手紙を受け取る。ヌヴェールだけは反対するのでヴァランティーヌは夫を見直す。しかしラウルのことが心配でならない。旧教徒たちが新教徒打倒のために去っていくとラウルは同じ信仰を持つ仲間のために、ヴァランティーヌと愛を誓いながら去っていく。

5幕

未亡人となったヴァランティーヌはラウルとマルセルのいるプロテスタントの教会にやってくる。ラウルに改宗してマルグリットに匿ってもらおうというが、ラウルは拒絶する。ヴァランティーヌはマルセルに立ち会ってもらってプロテスタントに改宗する。外ではサン・バルテミーの虐殺が始まっている。旧教徒たちが押し入ってきて改宗をせまるが、3人は拒絶すると、サン・ブリの合図で銃殺されてしまう。サン・ブリは虐殺した新教徒の中に自分の娘が含まれていることを知って唖然とする。

       

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フランスの宗教戦争が題材になっているオペラです。実在人物のマルグリット・ド・ヴァロアも登場します。彼女はヴェルディの「ドン・カルロ」のエリザベッタの妹です。アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディチの間に生まれた王女です。アンリ2世が事故死すると、スコットランド女王メアリー・スチュアートの夫でもあるフランソワが即位しますが、実権はカトリーヌが握ります。フランソワが病死すると、弟のシャルルが即位します。シャルルはハプスブルク家のエリザベトと結婚しますが、プロテスタントの女性を愛人にします。当初、エリザベトの力が大きくなるとオーストリアの影響を受けることになると思っていたカトリーヌは黙認していましたが、そのことによりプロテスタントの勢力が大きくなります。宗教間の溝が深くなり争い事が多発しました。サン・バルテミーの虐殺はカトリーヌの陰謀だと言われていますが、これにより、フランスはプロテスタントの勢力が小さくなります。シャルルも、その弟で王になったアンリも病弱で、カトリーヌのいいなりでした。アンリの死後、ブルボン家でプロテスタントのアンリが改宗して即位します。マルグリット・ド・ヴァロアはその后になりますが、子供ができないと言う理由で離婚し、アンリはマリー・ド・メディチと結婚します。

マイヤベーアの代表的グランド・オペラです。カトリックとプロテスタントの区別をはっきりさせるために、衣装だけではなく、音楽も聖歌と賛美歌の違いをはっきりさせています。旧教徒が歌う時は聖歌のように、新教徒が歌う時は賛美歌のような旋律なのです。実際は聖歌を元にした賛美歌もあれば、賛美歌を元にした聖歌も存在するのですが。どちらにも属さず争い事にも加わらないのがジプシーです。3幕のジプシーのバレエも見逃せません。

このオペラにはヒロインが二人います。前半はマルグリット・ド・ヴァロア、後半はヴァランティーヌです。華やかさと水戸黄門のようなカリスマを強調するマルグリットに対して、恋だけのために宗教もモラルも乗り越えようとするヴァランティーヌはとても情熱的です。ヴァランティーヌが神に祈る場面は多いのですが、その神はカトリックでもプロテスタントでもどうでも良いのです。彼女にとって大切なのは愛する人と共存できる宗教であるというところだけです。もっともカトリックもプロテスタントも儀式の進め方こそ違っていても同じ聖書の教えに基づくキリスト教なのですから。ラウルはこの両方の女性に惹かれます。

悪役になれないのが、ヴァランティーヌの夫のヌヴェールです。彼はカトリックでありながら、プロテスタントとの和平を願っているのです。ラウルもヴァランティーヌも彼を憎むことができません。5幕ではヌヴェールが既に死んでしまっている、というのは彼を悪役にしたくなかった台本家の計算ではないだろうかと思います。

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