Jenufa

(原作ガブリエラ・プライソヴァー/作曲ヤナーチェク)

あらすじ

1幕

モラヴィア東南部のスロヴァーツコ地方の村にあるブリヤ家の製粉所の前で、ブリヤ家のおばあさんと養女のイエヌーファが仕事をしている。イエヌーファはおばあさんの血がつながった孫のシュテヴァの子供を密かに身篭っているので、彼が徴兵されないかと心配している。シュテヴァの母親の連れ子、ラツァはおばあさんが血のつながったシュテヴァを特に可愛がっていること、イエヌーファも彼を愛していることで、嫉妬でいらついている。シュテヴァが戻り、徴兵されなかったことをブリヤ家に知らせ、イエヌーファは喜ぶ。そんな態度を教会のおばさんと呼ばれている彼女の継母はたしなめる。ラツァは嫉妬から彼女の顔をナイフで傷つけてしまう。

2幕

イエヌーファは教会のおばさんにウィーンへ行ったことにされて匿われながら、シュテヴァの子供を産んだ。教会のおばさんは、シュテヴァを呼んで、イエヌーファと結婚するようにと頼むが、彼は、イエヌーファが顔を傷つけられてから暗い性格になってしまったこと、自分は村長の娘カルロカと婚約したということで、イエヌーファや赤ん坊の顔を見ようともしない。ラツァが入って来て、顔を傷つけてしまったことを償いたいこと、シュテヴァの子を産んだイエヌーファを受け入れたいことを教会のおばさんに言う。教会のおばさんはラツァに赤ん坊は死んだ、と言う。ラツァが出て行くと、世間体を気にした教会のおばさんは赤ん坊を外へ連れて行き、冬の川に沈めて戻ってくる。教会のおばさんは、イエヌーファには、赤ん坊が病死したと言う。彼女は戻ってきたラツァとイエヌーファを祝福しながらも自分の罪の重さに苦しむのだった。

3幕

2幕から2ヶ月後、ラツァとイエヌーファはささやかな結婚式を準備している。村長夫妻や、1週間後に結婚する予定のシュテヴァ・カルロカも祝福しにやってくる。川から赤ん坊の遺体が発見されたという知らせが入ってくる。その赤ん坊がかぶっていた帽子に見覚えのあるイエヌーファはショックを受け、村人達は彼女に石をぶつけようとする。教会のおばさんは自分の罪を告白し、法の裁きを受けるために連れられて行く。事情を知ったカルロカはシュテヴァとの婚約をとりやめることにする。残されたラツァとイエヌーファは今までのことを全て水に流して、新しい幸せを共に築いていこうと誓い合う。

 

****************************

 

音楽は全体的に暗い感じがしますが、場面の合間に民謡やフォークロアなどが入るというところに、ヤナーチェクのサービス精神を感じさせます。また、2幕でのイエーヌファが自分の子供を思う母性あふれる場面の音楽はとてもやさしい感じがします。

何も、望まれない子だからといって、殺さなくても、イエヌーファたちのように、養子に出すという方法だってあるじゃないかと思うのですが、教会のおばさんはあまりにも思いつめすぎました。彼女をそこまでさせたものは何だったのでしょうか?もしも、ここが、東欧の農村ではなく、パリだったら、堂々と未婚の母でもやれたでしょう。しかし、あまりにも彼女たちの世界は狭すぎます。シュテヴァとつらい別れの後も、イエヌーファは、彼の顔を見ながら何事もなかったかのように、付合わなくてはなりません。

このオペラはタイトルロールのイエヌーファよりも、彼女の養母、教会のおばさんの方が、目を引きます。彼女もシュテヴァの叔父のために若い頃はつらい思いをしました。しかし、彼女は、女性が抑圧されている環境と戦うために、教師の職を選び、自立します。そして、村の中では品行方正で、優等生的な立場になってしまいます。祖先の悲惨な話を聞いて次々と求婚者を殺し威圧的で高慢な皇女の仮面の下に繊細で臆病な乙女が隠れているトゥーランドットのように、村の男たちの放蕩を非難しながらもその犠牲になることをイエヌーファ以上に怖がっているのです。

イエヌーファはルルやカルメンのような悪女でも魔性の女でもないのに、2人の男性を愛するというオペラには珍しい人物です。シュテヴァとラツァは、立場がそのまま入れ替わってしまいます。1幕で、シュテヴァはとても陽気で、イエヌーファもそんな彼に惹かれます。一方のラツァといえば、彼女が幸せの象徴として大事に育てているローズマリーの植木に害虫を忍ばせたり、というようなまるで、好きな女の子にわざと意地悪なことをしてしまう子供のような態度ですが、それがエスカレートして彼女の顔を傷つけてしまいます。ところが、顔に傷がついているからもう愛せない、自分の子供や教会のおばさん、イエヌーファが怖いという無責任で身勝手なシュテヴァ、自分のしたことを償いたい、彼女のことも受け入れたいというラツァと、2幕になると、2人の立場は逆転します。顔に故意に傷つけたラツァも、自分の子を産んだのに逃げようとするシュテヴァもどっちもどっちという感じです。典型的なムラ社会の環境にありながら、過去の男との恋・出産と自分の子の死を乗越え、新しい幸福を築いていこうと決意するイエヌーファはヤナーチェクに登場する新しい女性の典型です。

 

recommendhome