The Rape of Lucretia

(原作ローマ史話・台本ダンカン・作曲ブリトゥン)

あらすじ

1幕

男女のコメンテーターが、幕の外側で、エトルリアの暴君の圧政に苦しむローマの状況を歌う。

王子ターキニアスは、将軍コラチナスの妻ルクレティアへの思いを抑えきれず、夫の留守を待っているルクレティアのところへ向かう。

 コラチナスの家では、妻ルクレティアと侍女ルシア、乳母ビアンカの女性のみがいたが、王子が宿乞いにやってくる。夫の上司でもある王子の頼みだと言うので、断りきれず、泊めてしまう。

2幕

ターキニアスは本性をあらわしてルクレティアの部屋に押し入る。ルクレティアは抵抗しようとするが、力で負けてしまう。

次の日の朝、ルクレティアは夫を急いで呼びつける。不審がって、戻ってきた夫に喪服を着た彼女は夕べの出来事を説明する。夫は許して慰めようとするが、彼女は隠し持った刀で自殺してしまう。一緒に居合わせたコラチナスの友人ジュニアスが「エトルリアの暴君の正体を暴こう」と叫ぶ。一同はルクレティアの徳の高さをたたえる。

    

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「ルクレティアの凌辱」というのがよく知られている日本語のタイトルですが、そもそもあまり日常的日本語として「凌辱」という言葉は使いませんよね。むしろ、原語のタイトルの方がわかりやすいでしょう。「ルクレティアの強姦」と訳してしまうと、ルクレティアは被害者ではなくて、加害者のような誤解が出そうです。

ルクレティアは美貌と貞操の高さで有名なローマ史上の女性です。夫だって、慰めてくれているのに、こんなことができる女性は稀でしょう。この事件が発端となって、ローマの君主に対する不満が爆発してしまいます。その結果、共和制が生まれることになります。こんなに世の中に対する影響力が強い強姦事件は稀でしょう。彼女は貞女の鑑ですが、自殺して夫を悲しませてしまいます。いくら夫が慰めてくれていても、夫の心の中には疑いがしこりとなって残っているかもしれないことに耐えられないからでしょうか?それとも、貞操の徳というものをあまりにも重視しすぎてしまったからなのでしょうか?

多くの書物では、ターキニアスがルクレティアを犯したのは、恋慕によってということになっていますが、コラチナスとどちらの妻が貞操かということで言い争っていて、こっそり様子を見に行ったところ、ターキニアスの妻は、夫の留守中、男友達と騒いでいたが、ルクレティアは夫の服を縫って留守を守っていて、悔しかったという説もあるそうです。

このオペラは、主役はアルトです。おそらくメゾ・ソプラノが歌うことも多いのではないだろうかとは思いますが、アルトでかつ貞女の主役というのは珍しいでしょう。また、男女1人ずつのコメンテーターが登場します。政治的背景などをきちんと説明してくれているわけです。

音楽は、事件に及ぶ直前の、ターキニアスとルクレティアの緊迫した二重唱と、次の日の朝の乳母と召使が歌うゆったりしたさわやかな音楽との対比が、印象深いです。

 

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