Lucrezia Borgia,

(ドニゼッティ作曲)

 

プロローグ

ベネチアの人々がルクレチア・ボルジアを中傷している。彼女は何度も政略結婚をしたが、その嫁いだ先ごとに変死者を出しているのだ。そんな彼女も心の安らぎを感じることはできないでいるのである。番人のジェンナーロが彼女がルクレチアであることを知らずに愛を告白するが、同時に行方不明になっている母親を忘れられない身の上話をする。ルクレチアは感動して励ます。ジェンナーロは素性を聞こうとするが、悪名高いルクレチアであることを知られたくない彼女は、「あなたを愛している女」とだけ答える。しかし、戻ってきた人々がジェンナーロの目の前で彼女を侮辱し、素性を暴露する。

1幕

ジェンナーロは慕っていた女性が悪名高いボルジアであることを知って、落ち込んでいるが、友人のオルシーニたちとネグローニの館でお祭り騒ぎをしている。彼はボルジア家の看板を汚す。

ルクレチアは、夫のアルフォンソ大公に、ボルジア家を中傷した人々を罰して欲しいと頼む。しかし、その主犯がジェンナーロであることを知って、急に赦しを求めるので、大公はルクレチアの不貞を疑う。彼はジェンナーロを呼出し、赦免を装い、和解の印に酒をすすめるが、実はその中に毒が入っているのをルクレチアは知っている。ジェンナーロが飲んだ後、大公は去ると、ルクレチアはすぐにジェンナーロに実は酒の中に毒が入っていたことを告白し、解毒剤を渡して飲ませて、逃げるようにという。

2幕

ルクレチアを見直したジェンナーロだったが、オルシーニは彼女は救うふりをしただけで、本当は毒酒ではなかったのだろう、と言う。この町から去ろうとしたジェンナーロだったが、友人のオルシーニのために留まり続けることにして、2人でネグローニの館へ行く。

ネグローニの宴で、オルシーニとネグローニはケンカをしてしまう。ジェンナーロの仲裁ですぐに気をとりなし、能天気にオルシーニは乾杯の歌を歌うが、実はその酒の中には毒が入っていた。中傷した人々に対するルクレチアの復讐だったのだ。怒りながら登場したルクレチアだったが、その中にジェンナーロが含まれていたことを知って、愕然とする。ジェンナーロと二人きりになり、まだ残っている解毒剤を飲むように言うが、一人分しかない。ジェンナーロは友人と運命を共にしたいといって、飲むのを拒否して、ルクレチアにナイフで切りつけようとする。実はあなたは私の息子であると、ルクレチアは告白する。そうするうちにジェンナーロに毒が回ってしまい、母親の腕の中で死んでしまう。
人々をつれたアルフォンソがやってくる。ルクレチアはジェンナーロが自分の生き別れになっていた子供であったことを夫に告白し、自分の運命を呪う。

 

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歴史的に有名な悪女、ルクレチア・ボルジアが主役のオペラです。ボルジア家はイタリア・ルネッサンスの芸術を保護したのと同時に、毒薬の研究でも有名な名家です。彼女の肖像画を見ると、魔性の女というよりは、華奢で中性的な雰囲気のある楚々とした女性のようです。彼女は父や兄の意思で何度も政略結婚と夫の悲惨な死を経験します。これは、彼女と近親相姦の関係にあった兄の陰謀であるとも言われています。
しかし、彼女は次々と夫を死なせた悪女であると同時に、政略結婚の犠牲になった悲劇のヒロインでもあるという解釈もあるようです。

ドニゼッティのこのオペラの解釈はどうでしょうか?自分を侮辱した人間は死刑、というルクレチアの考え方は暴君そのものです。また、夫と意見が合わないときは、「ボルジアのやりかたで復讐してやる。」と言います。やはり、彼女はボルジアの一族で、夫殺しにも関わっていたのではないのだろうか?という気もします。しかし、そんな彼女も自分の息子は愛しているのです。どんな悪女と呼ばれる残酷な女性でも、自分の子供を愛していない母親はいない、というのがこのオペラの主題であるような気がしました。

音楽は、ドニゼッティの作品にしては、ヒロインが歌うコロラトゥーラはちょっと控えめな印象を受けます。でも、私はロッシーニ以外でオルシーニが歌うメゾのコロラトゥーラを聞いたのはこのオペラが初めてです。どちらかというと、聞き場はアリアよりも、二重唱の方があると思います。プロローグでの本当は自分に恋している青年に対して母親と名乗りたくても名乗れず、励ましてあげることしかできないルクレチアと彼女のやさしさを慕っているジェンナーロの二重唱、1幕でのアルフォンソとルクレチアの言い争い、2幕の友情を誓うジェンナーロとオルシーニの二重唱などです。

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