Lulu

(原作・ビュヒナー「パンドラの箱」「地霊」/作曲・ベルク)

あらすじ

プロローグ

猛獣使いが、それぞれの登場人物を動物にたとえて紹介する。

1幕

画家がルルの肖像画を描いている。彼女の愛人のシェーン博士が様子を見に来る。博士が去ると、我慢ができなくなった画家はルルを追いかける。そこへルルの夫のゴル博士がやってきて嫉妬の怒りのあまり心臓発作を起こして死んでしまう。

急に売れ出した画家はルルと結婚している。シェーン博士が結婚するという通知が入ってくる。ルルの父親と自称するシゴルヒが金をゆすりにやってくる。画家はシェーン博士からルルの過去を聞かされてショックで自殺をする。

シェーン博士の息子アルヴァの作曲した音楽でダンスをしているルルは客席にシェーン博士とその婚約者がいるのを見て、失神して楽屋に運ばれてくる。ルルはシェーン博士に婚約破棄の手紙を書かせる。

2幕

本命のシェーン博士と結婚したルルだったが、その魔性は消えていない。彼女は老若男女を受け入れているのである。アルヴァまでルルに愛を告白する。シェーン博士をピストルで自殺するようにと迫るが、逆に銃で撃たれてしまう。

ルルは逮捕されるが、レズビアンのフェミニスト、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢が身代わりになったおかげで脱獄に成功する。       

3幕

パリに逃亡したルルはアルヴァと株で儲けて豪華な宴を開いている。しかし、脱走犯である彼女はサーカスへ売ろうとしているロドリーゴや娼館へ売ろうとしている侯爵に脅迫されている。そこへ株が暴落したという知らせが入るので、大騒ぎになっている間に逃げる。

街娼になったルルはロンドンでアルヴァとシゴルヒと一緒に暮している。ゲシュヴィッツ伯爵令嬢もルルの肖像画をもってやってくる。

アルヴァはルルの客の黒人に殺される。ルルもまた別の客に殺される。かの有名な娼婦連続殺人犯である切裂きジャックである。ジャックは大学で女性の権利のために戦う決意をしていた伯爵令嬢をも殺す。

        

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オペラファンにとっては「魔性の女」というと、カルメンですよね?ルルも同じ魔性の女なのですが、カルメンと違うところは、誰でも受け入れてしまうところなのです。カルメンは気まぐれであるにしろ、的を一人に絞ります。興味がなくなったらはっきりとNOといいます。でもルルは違うのです。まるで聖母のように老若男女を受け入れます。それでいながら、関わった者は全て彼女のせいで死へ追いこまれ、彼女自身も殺されてしまいます。

それから、ルルという名前、まるで風邪薬かペットのようですが、とても興味を引きます。彼女はドイツの貧民街で育ったようですが、アガーテでもマルガリーテでもありません。ボエームのミミという名前も似てはいるけど、ミミはとりあえずルチアという本名があります。画家は彼女のことをエヴァと呼ぶこともありますが、本名かどうかも不明なのです。

オペラでは悪女の主役の場合、セカンド・ドンナはリューやミカエラのように清純可憐な女性と決まっているではありませんか?しかし、このオペラではそのような女性は登場しません。代わりにゲシュヴィッツ伯爵令嬢を登場させます。貧しく不幸な少女時代を過ごしていたルルと違って彼女は伯爵家の育ちです。大学へ行きたいとも考えています。だからと言ってビラビラレースの服を着ているわけではありません。ジュルジュ・サンドのように男装をして登場することが多いのです。そして、他のオペラでは絶対に登場するとは考えられないレズビアンのフェミニストなのです。現代的要素の多いオペラです。もしかすると、このオペラのテーマは「運命の女」ではなく「性の解放」だったのかもしれません。

音楽は無調音楽です。よくプッチーニやワーグナーは人や物を象徴するのに、何度もそのテーマとなる旋律を流します。ベルクの場合は、旋律ではなくて、音そのもので登場人物を表現するのです。またメロドラマという新しい形態も使っています。これはオーケストラが音楽を演奏しているが、歌手は歌わないでセリフを言うものです。

現代音楽を敬遠してしまう人は少なくないと思います。残念なことにこのオペラの上演回数は極めて少ない上、正規の映像もないのです。素人としての見解ですが、私はリヒャルト・シュトラウスはワーグナーと現代音楽の橋渡しをした作曲家だと思っています。「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタの「偉大なる王女様」というアリアを聞いて気に入った方はこのオペラも気に入るのではないだろうか?と思います。ルルは極めて高音の多いコロラトゥーラソプラノですのでツェルビネッタと少しだけ似たところがあると思います。

このオペラを作曲したのはベルクですが、彼は2幕までしか作曲した後、死去しました。その後、シェーンベルクなどの当時の作曲家が3幕を作ろうとしましたが、ベルクの妻に反対されてできませんでした。しかし彼女の死後、作曲家のツェルハによって補完されます。初演されたのは1937年にチューリッヒ歌劇場でですが、3幕版の初演は1979年、パリ・オペラ座です。42年もの間、未完の状態で上演されていたのです。

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