La Navarraise
(原作ジュール・クラルティ「煙草」・作曲マスネ)
あらすじ
1幕
1870年代スペイン内戦時代のバスク地方ビルバオの町で政府軍の軍人アラキルとナヴァラ出身のアニタは恋仲になっている。恋人の無事な帰還を待っていたアニタはアラキルと再会できたので愛の二重唱を歌う。アラキルの父で税務官レミージオも登場し、父子の再会を喜ぶ。素姓のわからないよそ者のアニタのことが気に入らないレミージオは彼女に2000ドゥロスの持参金を持って来たら、息子との結婚を認めるという。それは身寄りのないアニタにとって残酷な要求だった。さらに、政府軍の将軍ガリートはアラキルを中尉に昇進させ、余計に障害が強くなったことでアニタを絶望させてしまう。
ガリートが「敵のカルロス軍を率いるツッカラーガを殺したものにはいくらでも金をやる」というので、アニタはそれを申し出る。下士官からアニタがツッカラーガの元へ向かったということを聞いたアラキルは彼女とツッカラーガの関係を疑う。
2幕
アニタはガリードにツッカラーガを殺したことを報告し、報奨金を手にする。しかし、アニタがツッカラーガの愛人になったと思い込んだアラキルが彼女を取り戻そうとして敵から撃たれて運ばれてくる。アニタは否定しようとするが、2000ドゥロスの金を持っているので余計に疑われてしまう。
教会の鐘の音が聞こえてくる。やってきたレミージオとラモンからそれがツッカラーガの死の鐘の音であることを知らされたアラキルはアニタの血がついた手に気づくと死んでしまう。アニタは絶望してアラキルの死骸にしがみつくが、レミージオとラモンが彼女を罵る。正気を失ったアニタが不気味に高笑いをして幕が閉じる。
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「スペイン風カヴァレリア」とも呼ばれているこのオペラはマスネの作品の中でも、イタリアのヴェリズモオペラに似ています。しかし、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のようなのどかなシチリアではなくて、王位継承権をめぐるイザベラ女王を支持する自由主義派とフェルナンド7世の弟ドン・カルロスの保守派との内戦の激戦地が舞台となっています。幕が開くと、緊迫した音楽がながれます。すぐに不穏な情勢であるということがわかります。「カヴァレリア・ルスティカーナ」は保守的な風習があるにせよ平和そうな時代を背景にした四角関係が題材でしたが、「ナヴァラの娘」は、内戦時代を背景に保守的な父親のせいで相思相愛の恋人に悲劇をもたらすのです。
イタリアのヴェリズモオペラの手法をマスネはよく研究をしてそれを取り入れたものと考えられます。激しいドラマの中間に穏やかな間奏曲を入れてワン・クッション置いていますし、オペラ全体の上演時間といい、形式的にも似ています。しかし、マスネはそれだけでなく、遠くの陣営から兵士を呼び出すラッパの手法は「カルメン」をも思い出させますし、手をたたきながら歌いふざける下士官ブスタメンテの歌はスペインらしさを感じさせます。
アニタは恋人アラキルと結ばれたい一身で彼の敵を殺して大金を手に入れたのですが、彼の父親だけでなくアラキルまで誤解をされ、恋人からその誤解を解くことができずに死なれてしまいます。絶望したアニタの地声の高笑いで終わるのですが、観客をぞっっとさせるような大変不気味な終わり方です。この手の悲劇のオペラだと大抵は残された恋人の絶望的な叫び(それもオペラの歌い方で)を上げますが、そうだと可哀想だと思ってもどうしても観客はワン・クッション置いて見てしまいます。しかし、地声の高笑いはリアルな不気味さを感じるのです。