Pimpinone
oder Die Ungleiche Heyrath
(パリアーティ原作・プレトーリウス独訳・テレマン作曲)
あらすじ
1幕
ヴェスペッタがやもめ暮らしの金持ちピンピノーネの家に小間使いの職を求めにやってくる。下心を抱いたピンピノーネは彼女を雇うことにする。
小間使いになったヴェスペッタは雑用係の同情をひき、金庫の管理まで任せてもらえるようになる。彼女はちゃっかり中の宝石を自分のものにする。
ピンピノーネがヴェスペッタをハッスルしながら口説こうとする。彼女は変な噂を立てられては困るので、暇を貰おうとすると、「では私の妻になってくれ」と言われ、結婚する。ヴェスペッタはピンピノーネに家を守ることに専念することを約束する。
結婚した途端、ヴェスペッタは急に態度を変えて、外出・夜遊び・賭け事・社交の自由を要求する。ピンピノーネが結婚の際に交わした約束はどうしたかと聞くと「記憶にない」と聞き流してしまう。さらに、彼女は「遊ぶ権利は私だけ、あなたは払うだけ」と一方的に決め付ける。さすがに怒ったピンピノーネは口論するが、結局、愛情をあきらめられず、負けを認め、「世の夫たちよ、悪妻には気をつけよ」と呼びかける。
ヴェスペッタはすっかり女王気分だが、ピンピノーネは「これからは貝になろう」とつぶやく。
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このオペラの正式名称は「ピンピノーネ、あるいは不釣合いな結婚」という題名です。不釣合いな結婚というのは、マヌケな金持ち男に聡明な小間使いという組合せのことを言うのでしょうか?
頭が良く機転に富んだ小間使いが上手にやもめ暮らしの金持ちの主人を利用し、玉の輿に乗るという話と歌い手が2人だけという人物構成からして、「奥様女中」を連想します。しかし、「奥様女中」の場合は、気難しい金持ちの年寄りには怒られてもあっさり聞き流すような女性がぴったりだと思いますが、こちらはオペラ・ブッファにしては残酷すぎます。一方的に「私遊ぶ人、あなた払う人」と言われてしまうのですから。ちょっとマヌケだけど人の良いピンピノーネは散々利用されます。もっとも小間使いに下心を抱いたのがいけなかったのですけどね。
最後のピンピノーネの「世の夫たちよ、悪妻には気をつけよ」という言葉は作曲家自身の経験もあるようです。テレマンはバッハと同時代のドイツ・バロックの巨匠なのですが、彼女の妻、マリア・カタリナ・テクストルは多額の借金をのことしたまま、他の男と駆け落ちしてしまうのです。
音楽は、ヴェスペッタの職を求めるアリアではじまります。前奏に端正な美しさがあるのですが、その美しさがこれから始まるこのオペラのストーリーを皮肉っているように聞こえます。機転のあるヴェスペッタの溌剌さと、「魔笛」のパパゲーノのようにピンピノーネの恋人の名はピン、ピン、ピン、ピンピノーナ」なんてハッスルして歌っていたのに、騙されていたことがわかり、どんどん落ち込んでいく同情を引くピンピノーネのマヌケさが対照的です。フィナーレではヴェスペッタが女王気取りで、誇らしげな歌を歌いますが、その合間にピンピノーネは「これからは貝になろう」と挟みます。
このオペラの原作はイタリア語の台本でした。このイタリア語版はアルビノーニが作曲しています。このオペラがハンブルクで初演され、大好評だったので、テレマンは4年後に続編「ヴェスペッタの愛」というオペラを作曲しています。しかし、そのオペラは残されていません。もしもこのオペラが作曲されていたとしたら、その後のピンピノーネがどうなったかわかるはずなのに、残念です。題名からして、彼は幸せになれるのでしょうか?