Porgy and Bess
(原作ヘイワード「ポーギー」・作曲ガーシュイン)
初演
1935年9月 ボストン・コロニアル劇場
登場人物
ポーギー(足の不自由な乞食、Br)/クラウン(沖仲士、Bs)/ベス(クラウンの恋人、S)/スポーティング・ライフ(麻薬密売人、T)/ジェイク(漁師、Br)/クララ(ジェイクの妻、S)/ロビンズ(漁師、T)/セリナ(ロビンズの妻、S)/マリア(隣人、A)/フレイジャ(いかさま弁護士、Br)/葬儀屋(Br)/物売り(MSとT)/刑事・検屍官・アーチデール(白人、セリフのみ)
あらすじ
1幕
かつては南部白人富豪の住宅地だったが、今では黒人達がひしめきあって住んでいるサウス・キャロライナ州のチャールストンにある貧民街キャットフィッシュ・ロウで、そこの住民達の一人であるクララが自分の子供を抱いて子守唄を歌っている。彼女の夫ジェイクや、同僚ロビンズ、キザな麻薬売のスポーティング・ライフたちはギャンブルに夢中になっている。
山羊車に乗ったポーギーが登場する。彼はクラウンの恋人ベスに恋をしているようである。ベスを伴ったクラウンが登場すると、ギャンブルに熱が入るが、やがて、ロビンズとクラウンが言い争いになり、クラウンはロビンズを殺してしまう。ベスはクラウンに逃げるように言うが、彼女はどこに匿ってもらえばいいのかわからず途方にくれる。その様子を見たポーギーは彼女を自分の家に入れる。
ロビンズの家で、葬儀が行われている。白人の刑事と警察官はピーターを連行し、未亡人セリナに明日中に埋葬されなければ解剖実験に使うことを言い残すが、有合わせのお金で葬儀ができることになる。
2幕
1ヵ月後、ベスと一緒に暮らしはじめたポーギーは幸せな生活を送っていて、ベスも他のキャットフィッシュ・ロウの女性のように慎ましい生活を送っている。弁護士がクラウンとベスの離婚手数料を求めに来る。アーチデールがやってきて、ピーターの釈放と離婚手数料がいかさまなものであることも知らせる。マリアはベスをキティワ島のピクニックに誘う。ベスは足の悪いポーギーに気兼ねするが、結局ついていくことにする。
島から戻る船にベスが一足遅れていると、潜伏していたクラウンが出てくる。ベスは既にポーギーと愛し合って一緒に暮らしているというが、船が既に出てしまい、クラウンの強引さに身を委ねてしまう。
ベスは一人でなんとか島から戻ることができたが、それ以来、病気で寝込んで1週間になる。なんとか良くなった彼女はポーギーにクラウンのことを見抜かれていたことを知り、クラウンの元へ戻ると言うが、ポーギーの心に打たれて、「ここにいたい」という。
次の日、外は大嵐になっていて、住民達はセリナの家に避難している。クララは夫ジェイクが漁に出ているのが気がかりでならない。外からノックの音が聞こえると、クラウンが入ってきてベスを取り戻しに来たという。ジェイクの船が転覆しているのを窓から見たクララは赤ん坊をベスに委ねて外へ出て行く。クラウンは「クララを連れ戻すことができたら、ベスを連れて行く」と言って出て行く。
3幕
ジェイクとクララとクラウンの葬儀が行われている。しかし、実は生きていたクラウンはベスを連れ戻すためにナイフを手にポーギーの家に歩み寄る。それに気づいたポーギーは格闘の末にクラウンを殺してしまう。
翌日、白人刑事と警官がやってくる。彼らはセリナに疑いをかけているが、アリバイがある。次にポーギーに、容疑はかけていないが、死体確認のために出頭するようにと言い、連行されていく。心細くなったベスにスポーティング・ライフはニューヨークへ誘い、麻薬の味を思い出させる。
一週間後、キャットフィッシュ・ロウに戻ってきたポーギーは皆に土産を得意になって渡しているが、ベスがいないことに気づく。彼女がスポーティング・ライフの誘惑に負けてニューヨークへ行ったことを知ったポーギーは絶望するどころか、生きているということに希望を感じて、ベスを探すために山羊車で旅立っていく。
***************************
このオペラは伝統的クラシックの基本もありますが、黒人霊歌やジャズなどの影響も強いオペラになっています。この作品は「オペラ」の範疇にありますが、「ミュージカル」として紹介されることも少なくはありません。主要人物の殆どが黒人になっています。子守唄「サマータイム」がこの中で最も有名ですが、オペラアリアとして紹介されることはまずありません。ガーシュインはロシア系アメリカ人ですが、ラヴェルなどの印象派作曲家に師事を頼んだそうですが、断られました。それは作曲家としての才能がないという理由ではなくて、あえて印象派にならなくても独自性の高い作曲家として十分にやっていけると見られたからだと言われています。
ベスは意志の弱い女性です。本当はクラウンとキティワ島で再会した時も、船が出た後だとはいえ、なんとか逃げようとすればできたかもしれません。しかし、頭ではクラウンよりもポーギーの方が大切だということがわかっていても、ベスは肉体的欲望を満たしてくれるクラウンに毅然とした態度は取れませんでした。また一度、麻薬に手をだした人が完全に足を洗うということは大変かもしれません。しかし、ポーギーが連行されてから1週間もしないうちに姿をくらましてしまうのは、麻薬の快楽の誘惑に勝つことができなかったからです。そんな彼女の弱さを知っても、ポーギーの愛が変わることはありませんでした。彼は1000マイルもかかるニューヨークへ山羊車でベスを探す旅に出ることにします。誰が見ても絶望的な状況なのに、希望を持ちつづることをあきらめないで終わるというポジティヴさが元気づけさせられます。
キャットフィッシュ・ロウは、黒人が住む貧民街ですが、コミュニティとしてのつながりが大変強いと思います。最初、クララの子は母親に育てられていますが、ジェイクの船が転覆すると、ベスの手に渡ります。ベスが姿を消してしまうとセリナに渡ります。ロビンスが死ぬと皆で葬儀のお金を出し合います。クラウンの恋人だった頃のベスは赤いドレスを着て酒が強く麻薬をやっていて他の女性たちから見ると浮いた存在でした。しかし、ポーギーの恋人になり、慎ましい生活を送ると、彼らは受け入れてしまうのでした。ポーギーのポジティブさ、愛の強さにも心打たれますが、近所付き合いとは?コミュニティーとは?とも考えてしまう作品です。