Il Prigioniero
(ダラピッコラ作曲)
初演
1949年12月1日ラジオコンサート/1950年フィレンツェ舞台上演
登場人物
囚われ人(Br)、母(S)、看守・異端宗教裁判長(Tの一人二役)、2人の聖職者
あらすじ
プロローグ
囚われ人の母親が、息子を訪ねるために、幕の前で待っているが、おそろしい独裁者が現れてくる夢を見たことを物語る。
1幕
スペインの宗教裁判所の地下牢にいる囚われ人は面会に来た母親に普段会うことを許されているのは看守だけで、彼の「友よ」という言葉で、自分が勇気付けられていることを話す。母親は自分の息子が拷問を受けていることを知り、悲しむが、看守がやってくると、牢獄から出て行く。
看守は、囚われ人に、フランドルの抵抗運動が成功したことを話し、希望を持つように諭す。入り口に、地下牢からは見えないはずの光が見えるが、それはおそらく看守が彼に希望を持たせるためにわざとしたことであるに違いない。
囚われ人は、暗くて長い出口のないトンネルから出て自由になろうと思う。2人の聖職者がやってきて宗教的議論をしているが、1人の聖職者が人の気配を感じるが、もう一人の聖職者は、ここにいるのは明日処刑されるのを待つ囚人が寝ているから不可能だろうと言う。囚われ人はなんとかして、自由の扉をあきらめないようにしようと頑張る。鐘の音がして、神をたたえる合唱が聞こえてくる。
囚われ人は、大きな庭へたどり着くことができた。自由になれたかと思うや、異端詰問裁判長が彼を捕らえ、「友よ」と語りかける。囚われ人が自由になるのは、火刑以外にはない。異端詰問裁判長は、「希望・最終の拷問」へと彼を伴って向かう。
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このオペラはヴィルディ「ドン・カルロ」と同じく、スペインのフィリペ王の宗教弾劾を題材にして作られています。しかし、単なる歴史物としてのオペラではなくて、牢獄に入れられ、死を待つのみの人間がどれだけ最後まで勇気と希望を持って生きられるかという精神性がテーマとなっているように思えます。
ダラピッコラはイタリア人ですが、幼少時に過ごしたピシーノは当時ハプスブルクの物でした。強制的にグラーツへ移住させられ差別を受けた経験から「人間の自由」というテーマを掲げてこのオペラが作曲されました。また、同じテーマで「とらわれ人の歌」という歌曲があります。これは「メアリ・スチューアートの祈り」「ボエティウスの祈願」「ジローラモ・サヴォナローラの辞世の句」の3作からなります。
囚われ人の自由を奪っているのは、スペイン王ですが、異端詰問裁判長や看守もまた、彼の指示で、囚われ人の自由を奪っています。異端詰問裁判長と看守はテノールの一人二役ですが、そんな立場でありながらも、囚われ人を励まそうとします。囚われ人にとって真実の自由とは、火刑による死のみでした。囚われ人は死に対して絶望するのではなく、希望を持ちながら死に臨みます。
このオペラはスペインの宗教弾劾をテーマにしていますが、これはまた、ナチスがヨーロッパを支配しているという時代の状況を反映させているものでもあります。