Il Rè pastre

(モーツァルト作曲)

あらすじ

1幕

シドンでささやかな羊飼の生活を送っているのアミンタには高貴な血を引き継ぎながらも一緒に羊飼いをしているニンフ、エリーザと恋人同士である。2人は政権がマケドニア王アレッサンドロに変ったことを話題にしているが、それでも庶民の自分たちは関係ないし、ささやかで、愛のある生活で充分満足していると言う。このアレッサンドロがシドンを攻略したのはストラトンの暴政から解放するためで、アミンタこそその新しい王の後継者であるということが判明したので、彼に話しかける。アミンタは自分の今のささやかな生活で充分満足していると言う。

実はエリーザはアレッサンドロに追放されたストラトンの娘タミーリをかくまっていた。彼女は自分の恋人アジェーノレがアレッサンドロの臣下になったことを怒るが、アジェーノレは変らぬ愛を訴える。

アミンタの元にアレッサンドロを伴ったアジェーノレが現れ、ストラトンに追放された王は息子アブダロニュモスをアジェーノレの父親に託し、老羊飼アルチェーオが父親がわりに彼を育てたということを説明し、彼こそが正統な王位継承者だと言う。アミンタは突然の知らせに驚き、祝福するエリーザに愛は変らないと言う。

2幕

エリーザはアミンタに会いに行こうとするが、アジェーノレは妨げる。アミンタもエリーザに会おうとするが、同じく妨げられてしまう。

何も知らないアレッサンドロはアミンタとタミーリの結婚を提案する。アジェーノレは驚くが、従うことにする。彼はエリーザの気持ちが理解できるようになる。

タミーリは自分を他人に平気で譲ろうとしたアジェーノレを罵る。アジェーノレは友情と愛情の葛藤に悩む。

アミンタの結婚式を兼ねた戴冠式で、祝福するアレッサンドロにタミーリがアジェーノレと恋仲だったことを告白する。エリーザはアレッサンドロにアミンタと羊飼の仕事をしていた時の幸福を奪われてしまったことを訴える。

アレッサンドロはこの2組のカップルを元の鞘に戻してあげ、庶民の心のわかる王アミンタを祝福し、タミーリとアジェーノレには別の王位を与えることにする。

 

 

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大変牧歌的でほのぼのしているのですが、小ぶりながらも政治を見るのは庶民の感覚がある人物が最も適しているということを言っているオペラです。マリー・アントワネットの弟マキシミリアン・フランツのザルツブルク訪問のために作ったオペラで、祝祭色の多い作品です。

このオペラは重唱が1幕と2幕のフィナーレでしか聞かれません。あとは、アリアをレチタティーボでつなぎ合わせているだけです。合唱もありません。人数構成がよく似ている「コシ・ファン・トゥッテ」のように、重唱によるヴァリエーションの変化を楽しむというものでもありません。大変シンプルです。ワーグナーが太さの変らないロープだとしたら、このオペラはアリアという玉をレチタティーヴォという鎖でつないだネックレスのようなものです。

ちょっと、ほのぼのしすぎていて、怒ったり悲しんだりする場面にリアリティが感じられないのですよね。そこがちょっと難なのですけど、音楽はモーツァルト好きにはたまらないでしょう。

ストーリーは貧しい羊飼いの生まれだと思っていたアミンタが実は王位継承者だった、という普通考えられないストーリーです。彼は元々野心を持っていたわけではないのですが、かえってそこを見込まれてしまうのです。これは、紀元前3世紀の実在人物、マケドニアのアレクサンダー3世によるシドン解放の実話に基づいているとされています。…といっても、衣装などは、モーツァルトの時代のロココっぽいものが多いでしょうね。チャイコフスキーのオペラ「スペードの女王」の劇中劇でも、「忠実な羊飼いの娘」というバレエ・オペラが上演されます。このオペラのようにほのぼのした牧歌的な雰囲気でありながらも、身分や金銭よりも愛のあるささやかな生活を選ぶという話で音楽もモーツァルトに似ています。そして、これらのストーリーはジャン・ジャック・ルソーの影響があるのではないだろうか、と考えさせられてしまうのです。

 

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