Rienzi

(台本・作曲ワーグナー)

初演

1842年・ドレスデン宮廷劇場

登場人物

コーラ・リェンツィ(ローマ教皇の公証人、T)/イレーネ(その妹、S)/ステファノ・コロンナ(B)/アドリアーノ(その息子、MS)/パオロ・オルジーニ(オルジーニ家の主人、B)/ライモンド(法王の補佐官、B)/チェッコ・デル・ヴェッキオ(ローマ市民、T)/アロンチェッリ(B)/講話使節(S)/ロンバルディアの町々・ナポリ・バイエルン・ベーメン等の大使たち、ローマ貴族達、使者たち、各修道会の司祭・修道士たち、ローマ親衛兵 

あらすじ

1幕

オルジーニ家の一味がレンツィの妹イレーネをさらおうとするが、コロンナ家の一党と争いになり、リェンツィに止められて失敗してしまう。

貴族達はリェンツィを平民上がりと見下すが、彼は平民からは慕われている。

コロンナ家の息子アドリアーノはリェンツィと友情を結んだ仲で、イレーネとは恋仲である。

教皇の公証人リェンツィは貴族の専制政治からローマ市民を解放する。彼は、王位を辞退し、単なる市民の守護者である護民官になると言う。

2幕

カプトールの広間で、議員達や外国からの使節を前にリェンツィは高らかに平和を訴える。しかし彼を快く思わない貴族たちが彼を殺そうと話し合っている。アドリアーノはそれをやめさせようとするが、パオロ・オルジーニがリェンツィに切りかかろうとするが、彼は無事だった。しかし、父であるスティファノ・コロンナまでがリェンツィに反乱を起こそうとたくらんでいた。だが、リェンツィはアドリアーノとイレーネの請いによって、彼らを許すのであった。

3幕

人望を抱いていた市民達もまたリェンツィの貴族に対する寛大さが戦いを招いたのだと不満を持ち始めている。アドリアーノは自分の父が恋人の兄と戦うことに苦しんでいる。戦いは市民側が勝ち、スティファノは死んでしまった。アドリアーノはリェンツィを恨むのだった。

4幕

アドリアーノは市民を煽り、リェンツィに対して反乱を起こさせようとする。勝利の祝典に向かう途中、リェンツィは市民に襲われそうになるが、無事だった。アドリアーノはイレーネを見て、反乱をあきらめるのだった。しかし、ローマの新しい皇帝は彼を快く思っていない上、教皇からのリェンツィの破門が宣告されてしまう。

5幕

貴族にも市民にも教皇にも見放されたリェンツィがカピトールの広間で祈っている。イレーネはリェツィから離れようとしない。市民はリェンツィの説得を聞かずに宮殿に火を放ってしまう。アドリアーノはイレーネを助けようと中に入るが、宮殿は焼け落ちてしまった。

 

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ヴェルディの出世作が「ナブッコ」だとすると、ワーグナーの出世作はこの「リェンツィ」になります。この作品よりも後の作品と比べて、ずっと全曲上演の機会が少ないのですが、いかにワーグナーの肩肘張って作曲したか、わかります。しかし、彼は後になってこの作品を未熟だと思ったのか、バイロイト音楽祭では上演しないようにとの遺志がありました。なので、稀に序曲が上演される以外は他の歌劇場でも「さまよえるオランダ人」以降の作品と違って滅多に上演されることはありません。題材もそれ以降の作品と異なり、魔力も神通力も登場せず、あくまで現実レベルの話で終わっています。また、この頃はまだワーグナーはレチタティーボを使っている部分もあり、3幕のアドリアーノのアリアではコロラトゥーラも用いられています。また、ワーグナーには珍しくアドリアーノという重要な役にメゾ・ソプラノのズボン役をわりあてています。でも、上演時間も約170分ですので、「オランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」と比較しても短くはありません。

5幕のリェンツィの祈りの歌「全能なる父よ、見下ろし給え」の旋律がそのまま序曲に用いられています。この作品にとって非常に重要なモチーフであることは間違いありません。

原作はブルワー・リットンの小説「コーラ・ディ・リエンチ」です。前作の「恋愛禁制」とは異なった倫理的なものを求めていたドレスデン滞在中のワーグナーはそれでオペラを作ろうという構想を持ちましたが、実際に取りかかったのは1年後のリガで台本化され、ロンドンを経て2幕まで作曲化された段階でブローニュにいるマイヤベーアに見せ、賞賛され、有力者に紹介状を書いてもらい、3年後に完成することができました。マイヤベーアなしでこの作品は完成できたかったかもしれません。ドイツ人でありながら、フランス・グランド・オペラの巨匠であった彼の影響があるのか、音楽が非常に絢爛でバレエ音楽まで挿入されています。しかし、こんなに緊迫した反乱と賞賛の場面が交互に続くような状態では、見る人を疲れさせてしまうのは間違いありません。それゆえ、現在のマイヤベーアの作品の同様の扱われ方をされています。

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