Salome
(オスカー・ワイルド/新約聖書原作、リヒャルト・シュトラウス作曲)
あらすじ
1幕
ヨカナーン(新約聖書の洗礼者ヨハネ)はヘロデ王に捕らえられて古い井戸の中に閉じ込められている。一方、ヘロデ王は后のヘロディアスの連れ子サロメに邪な感情を抱いている。その義父のふるまい方にうんざりしたサロメは宮殿の饗宴から抜け出して庭にやってくる。ヨカナーンの声を聞いた彼女は彼に興味を持ち、彼女に思いを寄せている兵士のナラボートを誘惑してヨカナーンを井戸から出させる。
ヨカナーンは元々はヘロデ王の兄の后でありながらも、ヘロデ王と結婚したヘロディアスのことを非難していたが、サロメはヨカナーンにひかれる。彼女はヨカナーンに近づき、ヘロディアスの娘であることを告げる。しかし、ヨカナーンは彼女を拒絶した。拒絶されるとされるほど、サロメはヨカナーンに情熱を感じるのだった。これを見たナラボートは絶望して自殺する。
ヘロデ王はサロメに踊りを踊るように所望する。ヘロディアスとサロメは反対する。しかし、ヘロデ王は「何でも望みのものを与えるから」というと、サロメは「7つのベールの踊り」を踊る。
踊り終わったサロメはヘロデ王に「銀の盆にのったヨカナーンの首」を要求する。ヨカナーンに批判されていたヘロディアスは喜び、ヘロデ王は狼狽する。ヘロデ王は他のものなら何でも与える、といってもサロメの気持ちは変らない。やむをえず、彼女の望みを受け入れる。
サロメは銀の盆にのったヨカナーンの首を受け取ると「今こそ口付けができる」と狂乱の混じった喜びかたをする。
それを見て恐ろしいと思ったヘロデ王はサロメを殺させる。
新約聖書のヘロデ王の義娘が母親にそそのかされて洗礼者ヨハネの首を要求する話からオスカー・ワイルドが脚本をつくり、リヒャルト・シュトラウスがその台本に音楽をつけてこのオペラが作られました。
不思議に感じるのはヘロディアスとサロメの母娘関係です。他のオペラでも見られるような親子愛を感じさせる場面がないのです。ヘロディアスは夫のヘロデ王が娘を邪な気持ちで見ていることに気づいていて、色気づいて成長した娘に対して複雑な感情です。しかし、サロメがヨカナーンの首を所望するのを母親を非難する男を憎んでいるのだとばかり思っているのです。でもサロメは母親のこととは関係なくヨカナーンの首が欲しいと言います。
このオペラでの見所は「7つのヴェールの踊り」と最後のサロメの狂乱のモノローグ。
「7つのヴェールの踊り」は裸身に7枚の色の違うヴェールを身につけた姿でとても官能的で有名な踊りです。サロメ役の歌手が踊るのですが、これは太った体形の歌手では難しいでしょうね。
最後の狂乱のモノローグですが、「狂乱の場面」というと、オペラファンにはルチアを中心としたベルカント・オペラでコロラトゥーラで心の異常さを表現するのが通常的なように思えます。しかし、サロメを歌うのはドラマンティコ・ソプラノ。なのに、ベルカント・オペラの狂乱よりもずっと狂乱な感じを受けるのです。ベルカント・オペラは大抵、失恋で心のよりどころを失った女性が歌いますが、サロメの狂乱は情熱と憎しみが鬱屈した女性が歌うのです。