La Clemenza di Tito
(メタスタージョ原作・マッゾーラ台本・モーツァルト作曲)
あらすじ
1幕
皇帝ティトが父親から皇位を奪ったことを恨んでいるヴィテッリアは、自分を愛しているセストに彼を殺すようにと頼む。セストを信頼しているティトは、セストの家系と縁を結びたいと言って、彼の妹のセルヴィリアと結婚させて欲しいと頼むが、セストの親友アントニオは彼女の恋人だった。セルヴィリアはティトにはっきりとアントニオと恋仲であることを告白するので、ティトは彼女をあきらめ、2人を祝福する。
ヴィテッリアはセルヴィリアとの結婚をあきらめたティトが自分との結婚を望んでいるということを知り、セストにティト殺害を頼んだことを後悔する。
ヴィッテリアが依頼を撤回したがっていることが伝わらないうちにセストは街を放火しティトと思えた人を刺す。街中が大火事でパニックになっている。
2幕
セストはアントニオに自分が事件の主犯であることを告白する。アントニオはセストが刺したのは別人で、ティトは死んでいないことを告げる。
ヴィテッリアは事件の発端だ自分であることが暴露されることを恐れているが、セストはティトにあくまで自分でやったと彼女を庇う。
セストはティトの裁判を受け、円形劇場へ連れられて処刑されようという時、ヴィテッリアが自分こそが主犯でセストは自分を庇っていたのだとティトに告白する。友人と婚約者に裏切られたティトは怒りと絶望に刈られるが、自分の慈悲はあくまでも不変でなくてはならないとして2人を許す。民衆はティトをたたえる。
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モーツァルトのオペラといえば、「フィガロの結婚」「コジ・ファン・トゥッテ」のようなオペラ・ブッファ、「魔笛」「後宮からの逃亡」をはじめとするジング・シュピールのように音楽が親しみやすく、洗練されていてウィットに富んだ登場人物のやりとりなどに魅力を感じる人が少なくないと思います。このオペラはオペラ・セリアですから、身分の高い人が登場人物で、ストーリーが堅苦しいという先入観を持たれるのかもしれませんが、他のオペラと変わらず音楽には親しみがあります。
1幕でのヴィテッリアがセストにティトへの怒りをぶちまけるアリアは「本当に怒っているの?」と聞きたくなるくらい、美しいアリアで、コロラトゥーラも「魔笛」で歌われる夜の女王のアリアほどヒステリックな感じはしません。このオペラで最も美しい部分はアントニオとセルヴィリアの愛の二重唱です。だからと言って、劇的要素が乏しいというわけでもありません。1幕の最後の「わ〜」という民衆の合唱をバックに歌われる重唱には緊張感があります。このオペラはアントニオとセストがズボン役ですので、テノールのティトとバリトンの総督ププリオ以外の主要人物は皆女声です。
自分の野心のために悪巧みをするヴィッテリアと恋人のためなら皇帝の申し出も毅然と断るセルヴィリアは、はっきりとしたキャラクターです。それに控え、自分の恋するヴィッテリアをきちんと説得できないセストと、皇帝の申し出だからと言って恋人を簡単にあきらめてしまうアントニオの2人のズボン役はなんだか優柔不断です。
ティトは実在の古代ローマ皇帝のティトゥス・フラヴィウス・ヴェスパジャーヌスをモデルとしているのですが、あまりにも出来すぎた人物として描かれています。こんなに民衆から慕われて、能力がある皇帝でしかも独身だったら、女性からはさぞかしモテモテだろうと思うのですが、そうはいきませんでした。セストという信頼していた人物に裏切られたということで、許せないという気持ちと助けてあげたいという気持ちの葛藤で人間味が感じさせられます。
モーツァルトが好きで、オペラセリアはちょっと堅苦しいので苦手だという方にチャレンジして欲しいと思うオペラです。