Tristan und Isolde
(原作・作曲リヒャルト・ワーグナー)
あらすじ
1幕
マルケ王に嫁いで行く誇り高い王女イゾルデは怒っている。彼女は負傷したトリスタンを介抱してあげたが、後で彼が自分の婚約者を殺した人間だということを知った。しかし、逃がしてあげたにもかかわらず、マルケ王への元へむかうこの船の舵をとっているのである。
イゾルデはトリスタンを呼んで、償いとして毒薬を飲んでもらおうと杯に盛り、2人で飲む。しかし、その杯の中に入っているのは妙薬で、イゾルデの侍女ブランケーネがすりかえたものだった。
杯を飲んだ2人はたちまち恋に落ちるが、イゾルデはマルケ王に嫁いで行く。
2幕
マルケ王がトリスタンの友人メロートと一緒に狩りへ出て留守の間、イゾルデはブランケーネに見張りをさせてトリスタンを待っている。ブランケーネはイゾルデにメロートに気をつけるようにと忠告するが、イゾルデは、トリスタンの親友が裏切るはずはないという。トリスタンがやってくると、2人は愛し合う。しかし、突然マルケを連れたメロートがやってきて、イゾルデの不貞の現場を見せる。マルケは信頼していた甥と妻に裏切られたことを悲しむ。トリスタンはメロートに刀で切りつけられて、負傷する。
3幕
自分の領地で負傷したトリスタンは静養しているが、イゾルデに最期に逢いたいと望んでいる。イゾルデが船でやってくると、トリスタンは息を引き取る。また他の船がやって来る。メロートが領地に侵入しようとしたのだが、トリスタンの臣下のクルヴェナルに打ち倒される。ブランケーネから妙薬のことを知らされたマルケが2人を許そうとしてやってきたが、イゾルデもまた愛の悦楽に浸りながら死んでいく。
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ドイツの「トリスタン伝説」を元にして作られた作品ですが、脚本などはすべてワーグナーによるものです。「トリスタン伝説」では、マルケ王に追放されたトリスタンは友人の妹の「白い手のイゾルデ」と結婚しましたが、マルケ王の王妃の「金髪のイゾルデ」のことが忘れられず、「白い手のイゾルデ」は寂しい思いをしていました。マルケ王に許された「金髪のイゾルデ」が船でやってくる時に「白い手のイゾルデ」は嫉妬からトリスタンを絶望させることを言って、トリスタンは「金髪のイゾルデ」とは逢えないまま死んでしまいます。
「イゾルデ」という名前はワーグナーとコジマとの間にできた娘の名前でもあります。彼は他の子供にも自分の楽劇の登場人物の名前をつけてはいますが、この娘は既に2人が結婚した時の子供ではなくて、コジマがまだ他の指揮者の妻だった時に身ごもった子供です。
ワーグナーのヒロインは、たとえ人間の役だとしても現実から逸脱しているように見えます。1幕の前半で、ブランケーネが必死でなだめようとしていましたが。ワーグナーの侍女の役は他のオペラで登場する侍女の役よりも立場が重いと思います。彼女が毒薬と妙薬を替えたのは、2人の命を守るためだったのですが、痛み止めや毒消しのような他の薬もあったのに、なぜあえて妙薬にしたのでしょうか?しかし、もしも妙薬でなかったら、2人は愛し合わなかったのでしょうか?妙薬はきっかけにはなったものの、元々他の要因があったのではないかと思います。そうでなかったら、イゾルデは婚約者を殺した人間を逃すはずはなかったし、3幕で負傷したトリスタンがイゾルデに介抱してもらった時のことを思い出すはずがありません。
この音楽はテンションの高い音楽というよりはどちらかというと官能的な音楽です。2人は死を望んでいますが、それは不倫であることの絶望から来るのではなくて、死による愛の浄化を望んでいるように見えます。2人はブランケーネに見張りをさせるものの、マルケにバレても言訳もしません。だからこそマルケ王が2人を非難したり許したりしようとする時に空しさが感じられます。