Tsarckaya Nevesta

(メイ原作/リムスキー・コルサコフ作曲)

あらすじ

 

1幕

親衛隊員のグレゴリーは商人の娘、マルファに求婚したが、彼女にはルイコフという貴族の婚約者がいるという理由で断られ、弱気になっている。親衛隊員の仲間達がグレゴリーを尋ねてきて、宴会を開いている。人々が帰ろうとすると、皇帝の侍医のボメーリイを呼び止め、娘を自分の惚れさせる薬を調合して欲しいとグレゴリーが頼んでいるのを、彼の恋人、リュバーシャが立ち聞きしてしまう。彼女はグレゴリーに心変わりを責めるが、冷たく拒まれてしまい、復讐を誓う。

2幕

供を連れたイヴァン雷帝がマルファと友人のドゥニャーシャの顔を覗いて去っていく。マルファの父親ソバーキンがルイコフを家に誘い、マルファは婚約者や友人と幸せそうにしているのをリュバーシャが遠くから見ている。リュバーシャはボメーリイの家を訪ね、美しさを失って行く薬を調合するようにと頼む。ボメーリイはリュバーシャにその引き換えとして愛を求める。一端、彼女は拒もうとするが、ボメーリイがグレゴリーに密告するというのと同時に、マルファの笑い声が聞こえたので、応じることにする。

3幕

マルファとドゥニャーシャは皇帝の花嫁候補として宮廷に呼ばれているのをルイコフが心配している。グレゴリーはマルファに惚れ薬を飲ませるために、婚礼の介添人を申し出る。ドゥニャーシャが皇帝に気に入られたという報告を聞き、ルイコフは希望を持つ。マルファやドゥニャーシャたちが戻ってくると、グレゴリーはルイコフとマルファの婚礼の祝杯をあげさせる。親衛隊員でリュバーシャの洗礼親であるマリュータが皇帝の花嫁に選ばれたのはマルファであることを告げる。

4幕

皇帝の婚約者として宮廷に連れてこられたマルファは弱りきって休んでいる。グレゴリーは彼女に、ルイコフがマルファに毒を持った罪で処刑され、自分が執行したことを告げる。マルファは叫び声を上げて、気を失う。目覚めた彼女は正気を失い、グレゴリーをルイコフだと思って話しかける。グレゴリーは薬が効いていないことに怒り、自分が薬を持って、ルイコフにその罪をなすりつけたことを告白する。人々は怒るが、グレゴリーはボメーリイを責める。
リュバーシャが入ってきて、自分が薬をすりかえたことを告白すると、グレゴリーは彼女を刺し殺してしまう。ソバーキンや貴族達はグレゴリーを捕える。彼はマルファに許しを請いながら連れ去られるが、ルイコフだと思いこんでいる彼女は明日も来るようにと頼む。

 

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イヴァン雷帝が3番目に結婚しようとしたマルファ・ソバーキナの悲劇を題材にしたオペラです。彼女は実在の人物で、婚約者として宮廷に入りますが、すぐに病死してしまします。しかし、ロシア・オペラによくありがちな権力者に対する不満と期待を持つ民衆の場面は殆どなく、ヴェリズモ的な要素が強いストーリーとなっています。

このオペラの悲劇のヒロインはマルファなのですが、なんとなくお人形さんのようなのです。皇帝の婚約者に決まったことを知らされるまでは、彼女は明るくて美貌と家庭に恵まれ、幸せしか知りません。人を憎むこともなければ、深く考え込むこともありません。そして、悲劇が訪れると、突然狂ってしまいます。その中間がありません。悩むこともないのです。どのオペラにも登場しそうな、典型的ヒロインですが、キャラクターとしては面白みに欠けます。
むしろ、リュバーシャの方が同情を引きます。彼女はグレゴリーにさらわれるような形で、恋人になります。自分の意志と関係なく、家族や友人からも離れ離れになってしまいますが、おそらくグレゴリーのその強引さと情熱に心を奪われてしまったのでしょう。しかし、情熱的だったグレゴリーの愛情もマルファの方に移ってしまいます。その上、裕福な商人の家で育ったマルファには幼馴染で相思相愛の婚約者、優しい父親と、親身な友人がいます。つまり、リュバーシャが失ってしまったものを全てマルファは持っているというわけです。グレゴリーの愛情が冷めても、リュバーシャが失ってしまった他のものが戻るということはありません。
彼女は、最後に自分のしたことを告白します。逆上したグレゴリーは彼女を刺し殺しますが、その時の彼女は「ありがとう」と言います。殺されるのに、お礼を言う人なんて彼女ぐらいのものです。しかし、愛する人に見捨てられる立場からすれば、放っておかれるよりは、殺された方がましだと思うのでしょうね。
それにしても、グレゴリーは私から見ると、相当身勝手な男ですが、その身勝手さを男らしくてステキと思う女性も多いのも事実です。しかし、そのような男は相手の立場を考えることができないから、愛する人を幸せにすることは不可能なのです。

 

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