La Voix Humaine

(ジャン・コクトー原作・プーランク作曲)

あらすじ

1幕

恋人と別れたばかりの女性の寝室に電話がかかってくる。1回目は間違い電話、2回目は混線している。女性が怒っていると、3回目に恋人だった男性から電話が来る。彼女は彼に別れてから今までどうしていたか報告する。男性の置いて行った荷物をいつでも取りに来るようにという。別れた理由は自分の方にあるから気にすることはない、などと言っているうちに電話の状態がおかしくなる。電話の向こうにいる男性の服装を言い当てているうちに、自分の状況も相手に見抜かれているのではないかと思うと急に不安になってきて、精神が不安定なことを告白する。彼からの慰めの言葉に感謝する。彼女は「もしもあなたが誠実でなければ電話は凶器になっているだろう」と言う。突然、電話の状態が悪くなって切れてしまうので、かけなおすが、彼は電話中だった。交換手から電話がかかってくると、彼は不在であることを知る。
再び男性から電話がかかってくる。彼女は今まで電話した内容はウソで、友人とも会わず心身ともにまいっている状態で睡眠薬に頼っていて、失恋のせいで自殺を考えていたことも告白する。
彼女は彼との電話でこのように、自分の精神は安定していると強がりを言ったり、逆に精神的に不安定な状態にあるということを言ったりしているのを繰り返している。
彼女は寝る時は電話を抱えていたという。なぜなら、別れた恋人と自分をつなぎとめられるものは電話しかないから。女性は「あなたの声を首に巻きつけたい」と言う。
男性がマルセイユに出張することを言うと、かつてそこで二人で泊まったホテルは使わないで欲しいと頼む。彼女は電話のコードを首に巻きつけながら男性に電話を切るようにと言う。そして彼女は「愛している」とつぶやきながら横たわって目をつぶる。

    

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たった一人の女性だけによるオペラです。場所はフランスのようですが、この女性の名前はわかりません。フランス・オペラでありながら、甘美なところはなく、恐い現代音楽に近いです。現代音楽といえば、ちょうどシェーンベルクも「期待」と言う、同じく失恋して正気を失った女性一人だけのオペラを作っています。このような登場人物がたったの一人のオペラをモノ・オペラと呼びます。
現代の私達にとっては当たり前のことのように日常的に使っている電話ですが、恋人と別れてしまったにも関わらず、その人のことが忘れられない女性にとってはその人からの電話は特別な意味を持っています。「あなたが誠実でなければ、電話は凶器になっている」という言葉は奥が深いです。この女性が首に電話のコードを巻きつけた理由は失恋で自殺するという目的ではなくて、もはや唯一のものになってしまった彼と自分を結びつけるものにすがりたいという気持ちからであります。
女性一人で演じるオペラですから、電話線の向こうの男性ってどのような状態なのかよくわかりません。もしかすると、電話で話している相手は彼女の恋人だった男性ではないという可能性だってあるし、彼女が妄想のまま話しているに過ぎないと言うことだって考えられます。しかし、混線や間違い電話、話し中、不在などの、色々な電話の状態をプーランクは表現しているのが、このオペラに動きを出しているように思えます。
それにしても、この女性はこの先、一体、どうなったのでしょうかね?もしもこの女性が本当に元恋人と電話で話していたのだとしたら、この男性は恐い思いをしているでしょうね。きっと。見に覚えのある男性が観ると、きっとひやりとしそうです。

 

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